世の中が大きく変わりそうなときこそ、自分を見つめる絶好の機会。そんな時、本や映画を嗜むのはいかがでしょうか。料理家の麻生要一郎さんおすすめの本を2冊紹介していただきました。切れのある文章から感じる人間性にほれ込んでいるそう。また、本を読むのが一層楽しくなる、おしゃれブックカフェやミュージアムもご紹介します。
『泥水のみのみ浮き沈み 勝新太郎 対談集』
文藝春秋編(写真右)
希代のスター勝新太郎がハワイでのお騒がせ事件後に『文藝春秋』で行った対談をまとめた。対談相手はビートたけしや瀬戸内寂聴など計8人。「中村玉緒さんとの夫婦対談は本当に面白く、大人の愛が詰まっています」。文春文庫
『海苔と卵と朝めし』
向田邦子(写真左)
食いしん坊の著者の食に関するエッセイ29篇を集め、小説1篇とともに収録。「小気味の良い文章が心の換気をしてくれるよう。特に『ゆでたまご』の切なさが印象的で、向田さんの愛の概念が知れて、深く頷きます」。河出書房新社
2人の圧倒的な人間力に魅せられます。
自宅が千駄ヶ谷なので、街に溢れるオリンピックへの高揚感を肌で感じて
いたら一転、2カ月の外出自粛。世界は何でも起こり得ると思い知りました。でもある、そんな〝人間力〟の大切さその間は読書と、息苦しさに耐えかねて始めた近所の散歩が日課。次に生きるヒントを探していた中で、これらの本も手に取りました。
向田さんのエッセイは、文章のキレが心地よく何度も再読しています。また勝新さんの破天荒ぶりは昨今では不適合かもしれないけど、その美学はやはり男の憧れ。どちらも大らかで、人間臭いんです。時代が移っても人の心情はそう変わりません。
ジタバタ考え過ぎず、自分に正直に。そして周りの人の気持ちをできるだけ汲んで、寄り添って、必要ならそっと背中を押してあげる。僕の理想でもある、そんな〝人間力〟の大切さを教えてもらった気がします。
麻生要一郎/あそうよういちろう
料理家。建築・飲食業を経て、新島の宿で料理を8年担当。 現在は親の2人の老姉妹を介護しつつ、注文弁当に対応。表参道の書店 『HADEN BOOKS:』 代表でもある。祖父は文芸評論家の大井廣介。
本と新鮮な出会いができる場所。
書店やネット検索ではなく、本との新鮮な出会いを提供してくれる2つの施設を紹介します。絵とことばをテーマに初めは『BUNDAN COFFEE&BEER』。日本近代文学館内にあるカフェで、店内の蔵書約2万冊はすべて閲覧自由。メニューには作家や文学作品をモチーフにした料理や飲料が並ぶので、料理に興味をそそられ、後にそれと関連する小説に親しむ、なんてことも珍しくないとか。
BUNDAN COFFEE&BEER
住:東京都目黒区駒場4-3-55(日本近代文学館内)
電:03-6407-0554
営:9:30~16:20
休:日・月・第4木曜日(文学館に準拠)
http://bundan.net
そしてもう一つ 2020年6 月に立川市にオープンした『PLAY! MUSEUM』。絵とことばをテーマにしたミュージアムを核とする複合施設です。オープニングに常設展として「エリック・カール遊ぶための本」、企画展として「tupera tuperaのかおてん .」を開催。子どもに限らず大人にとっても、思いもかけない新鮮な本との出会いがあるはず。ぜひ本を“体感”してみてください。
PLAY! MUSEUM/プレイミュージアム
住:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
電: 042-518-9625
営:10:00~18:00(入場は~17:30)
休:無休(展示品の入替等を除く)
https://play2020.jp/
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『ku:nel』2020年9月号掲載
写真/加瀬健太郎 編集/友永文博