家を建てて40年近く。日々持ち物を見直し、アップデートしてきた石黒さん。特に毎日の調理で使う台所道具は、自分の年齢や体力に合わせて交換してきたそうです。そんな石黒さんに、見直しのキーワードや道具選びのコツを教えていただきました。
「いまのベター」を探して日々、持ち物を探して。
「いいもの探しのスペシャリスト」 「快適暮らしの名人」として、暮らしの工夫や、愛用品を自著や雑誌で紹介してきた石黒智子さん。そのアイデアや、お気に入りの道具リストは、真剣に暮らしに向き合うなかで磨き上げられてきたものです。状況や体力の変化に合わせ、「その時のベター」を探りながらブラッシュアップさせてきました。60代後半のいまも、日々持ち物を見直していると言います。「いまのベター」を教えていただきました。
見直しのキーワードは、より軽く、小さく、少なく。特に、毎日の調理で使う台所道具は、最小限に数を減らし、扱いやすく、手入れのラクなものへと交換します。ひとつのきっかけは、毎年、開催していたお花見をやめたこと。 庭には樹齢70年を越える4本の見事な桜があり、開花時期の10日間に50人を超える来客をもてなしてきました。「でも、もう体力的に無理、と思って2019年の春、今回を最後にしようって決めました」 最後のお花見に大切な食器やグラス、調理道具の四分の三を来客にゆずることができたのが幸いでした。歳を重ね、食事量も減ってきた最近は小皿の出番が増えてきました。
大切なのは軽量感。
物の配置も見直し。
調理家電も最小限に。
選ぶ色も変わりました。
「気力、体力のあるうちにと、身の回りのいろいろを点検しています」 ここ一年のうちにも暮らしに大きな変化がありました。それは、世界中の人の暮らしを激変させたコロナの影響です。外出自粛で行動範囲はぐっと狭 まりました。そして、友人を招いての 食事やご近所の方とのお茶も休止。でも、石黒さんはあくまでも軽やか。手紙を書くことが増え、買い物も、インターネットを駆使して日本中、いや世界中の商品を検索、比較検討し、自分の欲しいものに確実にたどり着いています。
「どこで暮らそうが、誰もが家にいながらにして、世界中から欲しいものを探し出せます。出かけるのを控えるようになった社会現象への対応で、世界中の書籍や食品が以前よりずっと簡単に購入できます」
いしぐろともこ
収納、家事のアイデアなど、暮らしにまつわる情報を独自の観点で発信。近著は『60代 シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)。
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『ku:nel』2021年5月号掲載
写真 杉能信介 / 取材・文 鈴木麻子