展示再開!北欧デザインの祖・アアルトの軌跡を辿る。『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』展が世田谷美術館で開催中。〜6月20日

6月1日から展示を再開した、東京の「世田谷美術館」で開催中の『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』展。北欧建築デザインの祖アルヴァ・アアルトの最初の妻、アイノ・アアルトに焦点を当て、建築、プロダクトデザイン、写真、スケッチなどから、アアルトの基礎を作った「暮らしを大切にする」という視点を改めて考えられます。

フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルト。そんなアアルトの最初の妻で、公私にわたるパートナーとして、数々の作品を世に送り出したアイノ・アアルトにフォーカスし、二人が出会ってからアイノが1949年に亡くなるまでの25年間の仕事を紹介する、国内初の展覧会『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』が開催中です。

アイノ・アアルトとアルヴァ・アアルト、1937 年 Aalto Family Collection, Photo: Eino Mäkinen

アアルト=アルヴァ・アアルトとされることが多いですが、妻のアイノは夫・アルヴァと対等な関係でアアルト事務所を牽引。現在も続くインテリアデザイン会社『Artek(アルテック)』の初代ディレクターを務め、自身も建築家・デザイナーとして活躍しました。家庭と普段の生活を愛する二人の子どもの母親でもあり、そんなアイノの「暮らしを大切にする」という生活に根ざした視点が、アアルト建築の基本となったと言われています。

アルヴァ・アアルト、スツール 60、1933 年デザイン Alvar Aalto Foundation

今回の展示は、そんな二人の軌跡を時系列に紹介するもの。図面やスケッチ、家具、プロダクトデザイン、建築模型、写真など約200点を展示しています。

アイノ・アアルト、ボルゲブリック・シリーズ、1932 年デザイン Alvar Aalto Foundation

展示の始まりは、1930年の最小限住宅展で発表された住宅。狭い空間ながら動作の無駄がない、効率的な家事ができるような作りになっていて、合わせて作られた家具は実用的で軽く、衛生という観点からも気を配られているそう。

最小限住宅展の様子。 撮影:上野則宏

また1936年、ヘルシンキに建てられたアアルトハウスは、インテリア装飾や設備の設計をアイノが担当。建築事務所も兼ねていたため、引き戸で家族とのスペースを分けていました。アアルト家具が配置され、快適さと居心地の良さを大切にしたモダニズム住宅は、今でも多くの人が訪れる住宅建築の傑作のひとつとされています。

アアルトハウス庭側立面スケッチ、1935 年 Alvar Aalto Foundation
アアルトハウス リビングルーム Alvar Aalto Foundation

アアルトが設計した住宅の大半は、一般の人々のための集合住宅や規格化された戸建て住宅。常に社会問題の解決に関心を持ち、解決できる住宅作りを目指しました。QRコードを読み取ることで、ベイカーハウス(アメリカにあるアアルトが設計した学生寮)をスマホで立体的に見ることができる、ARコンテンツを楽しめるというのも画期的なコーナーも。

幼稚園や保育園、保険医療施設のインテリアや家具も多く手がけた。

展示の最後には本展の見どころ、日本初公開となる、家族の写真やプライベートのスケッチなどのファミリーコレクション。旅先で二人がかぶっていた帽子や、アイノによるテキスタイルのスケッチなど、忙しいながらも家族との時間も大切にしていた様子が垣間見られます。

アイノ・アアルト、ヴィラ・フローラ水彩スケッチ、1942 年 Aalto Family Collection
アイノがデザインしたテキスタイル。
会場内には「アアルトデザインと暮らす」と題したコーナーも。
ミュージアムショップでは図録のほか、「アルテック社」のエプロンやスツールなども販売。

アイノは54歳という若さで他界しますが、25年の間に生み出したデザインや暮らしへの考え方は、私たちの生活にも大きな影響を与えています。建築に興味のある人はもちろん、自分の暮らしを考えるきっかけになりそうな、見応えのある展示です。会期終了が迫っているので、気になる方はHPでご予約のうえ、足をお運びください。

取材・文/赤木真弓

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