韓国の首都ソウルで35年住んでいた、俳優のキム・ヘナさん。パートナーとの出会いをきっかけに、海辺の田舎、江原道へ移住。美しく開放的な景色の中で、新たな暮らしを築いています。以前よりもいきいきしているというキム・ヘナさんに、生活や心境の変化を伺いました。
海辺の安らぎに、いつのまにか癒されています。
江原道のヤンヤンエリア。キム・ヘナさんは数年前サーフィンをしに訪れ、すっかり気に入ったのだそうです。
「気持ちいい所。ずっと住みたいと思っていましたが、女一人では少し心細いと実現できなかった。そこに、水中撮影監督である今のパートナーとの出会いがありまして、踏み切ったんです」
彼がすでに拠点を持ち、暮らしの基盤を築いていたので、移住への流れは順調だったそう。2人で住む家を借りカフェも開いて、1年以上が経過。
「ときどきソウルに演技の仕事で行きますが、今9割がたはこちらです。カフェをやっていても時間はたっぷり」
35年間住んでいたソウル江南のド真ん中と、この海辺では空気も時間の質もまるで違っています。
「以前は休みの日は家でこもりっきりだったけど、自然の中で目覚める環境だと、自ずと外に出なくてはという気分になります。ソウルでは他人と自分を比べたり、やらなければいけないことが多すぎて、それがストレスになっていました。田舎暮らしが性にあったのか、いろいろな荷物を下ろせて、徐々に精神的に解放されました。鬱々としていたのが嘘みたい。友達にも表情が明るくなったと言われます」
このイングの町は病院も遠いし、スーパーもないけれど、生活の不便を補うものがたくさん。ヘナさんが「退屈さえも乗り越えられる土地の魅力」と言う何かが流れています。
→後編に続きます。
キム・ヘナ
名門の国立芸術大学、韓国芸術総合学校の演劇院卒業。2001年『フラワー・アイランド』で鮮烈にデビュー、釜山映画評論家協会賞新人女優賞を受賞。以来、多くの映画に出演している。新作の『エウォル〜風にのせて』では、恋人をなくし傷心のまま済州島に住み着いた女性を演じた。キム・ヨンミンと共演の『母をお願い』は12月にクランクイン。TVドラマでも時代劇『イニョプの道』などで活躍。
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『ku:nel』2021年1月号掲載
写真 Kyutai Shim STUDIO HARU / 取材・文 原 千香子、Shinhae Song TANO INTERNATIONAL