暮らしてみないと分からない、フランスのリアルを在パリ6年目の松永加奈さんがレポートするこの連載。今回は、意外と知らない、でも気になるお金の話についてです。
我が家はリアルタイムで日本のテレビが観られます。番組はもちろん楽しみなのですが、「ああ、●●が食べたい」「また新しいモバイルサービスが出たの?」と日本の「いま」を伝えるCMにも釘付け。そしていつも「日本は何でも安い!」と家族で話題になります。
フランスは物価が高くて「付加価値税(消費税)」の税率がなんと20%!一部の食品やレストランのサービス、演劇鑑賞や新聞など、何種類もの「軽減税率」が適用されていますが「バゲットは5.5%でサンドウィッチは10%、但しアルコールとセットなら20%」のようにあまりに複雑過ぎて、フランス人もよく分かっていないそう。お店で日用品を手に取り「おぉぉ…」とお値段にびっくりすることもいまだにしょっちゅうです。そのため、パリで生活する人、特に若い世代は、通販やリサイクルを上手に利用したり、無駄買いをせず、節約は当たり前。そして「使う時は使う」というメリハリがしっかりしているように思います。
何でも高いお金がかかるフランスですが、社会保障は充実。加入義務のある「国民健康保険」のほかに任意保険(ミチュエル)があり、公的な保険でカバーされない医療費を補えます。基本的に勤務先で団体加入でき、その場合自己負担が少なく済むので、ほとんどのフランス人が加入しているそう(個人加入も可)。それとは別に生命保険もありますが、「ミチュエルに入っておけば大丈夫」という人が多いせいか、日本よりも加入率はずっと低いとか。失業保険もしっかりしていて(自己都合退職など一部を除き)受給期間が長く、その間に留学したり起業準備する人も。日本とは保障のシステムがかなり異なり、とりわけ公務員や企業に所属する人の話を聞くたびにびっくりします。
また、貯金をするよりも、若いうちに家を買ったり、投資や資産運用する人が多い印象。フランスは不動産の価値が下がらず、むしろ上がるので「高い家賃を払うなら買って資産にする」という考え方が主流です。貯金は「来年のバカンス用」「クリスマスプレゼント費用に」といった、直近の目的に向けてするもので「いざというときにのために」という漫然とした理由は殆ど聞きません。ほかにも、収入に応じて内容は変わるものの、手厚い子ども手当や各種控除、補助がいろいろ。保障を受けつつ、住み替えたり移住したり、ライフスタイルの変化に柔軟に対応しながら、老後を迎えるイメージです。
日本人の私から見れば「守られているなあ」と感じるフランス人の暮らし。とはいえ「高い税金や社会保険料を支払っているから当然!」というのがフランス人の主張。そしてあれこれ手厚い分、問題も山積みです。何が幸せか?というのは本当に人それぞれ。暮らしとお金の関係は、お国柄の違いを大きく感じるところです。
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