料理界でもとくに器好きで知られる冷水希三子さんの膨大な器コレクションを見せていただく取材、今回でいよいよ最終回。気になる作家とストーリーのある器について伺います。作家ものと言っても、冷水さんの場合、名前より先にまずモノありき。それからどんな人が作っているのかが気になって、会ってみたくなるのだそう。思い出の詰まった器も見せていただきます。
【三谷龍二】
人気の木工作家の器はあえて黒漆を。
個展を開けば行列ができ、初日で完売する人気木工デザイナーの黒漆の大皿。「私には素地のものより漆のほうがしっくりくる気がします。木の器って偉い。結露しないので、こんな使い方もできるんです」と氷を敷きつめ、冷酒をサーブ。
【イ・キジョ】
凛とした佇まいの韓国の現代白磁。
日本にもファンが多い韓国の現代白磁の第一人者、イ・キジョ。「どんな料理にも、どんな器とも合わせやすいこっくりとした深みのある白。素っ気ないくらいシンプルですが、業務用とは一線を画す洗練された佇まいがいいんです」
【マリー・ローズ・カーン】
繊細でモダンなムラーノガラス。
ファッションや舞台衣装のデザインで活躍してきたマリー・ローズ・カーンが立ち上げた「ヤリ・ガラス」。「ニュアンスのあるグレーが大人っぽくて好き。水用グラスに2型買って使ってみて、結局、スリムなほうをもう5個追加しました」
【20年毎日使っているコーヒードリッパーの作家に再会。】
20年前に大阪で買ったコーヒードリッパーは、知人でもある古谷朱里さん作。「信楽で個展を開いていた彼女に20年ぶりに偶然再会。今は信楽を拠点に薪窯で焼いていて、作風がまったく変わりましたが、現在の自然釉のニュアンスも素敵です」
【器を背負って現れた、名もなき女性陶芸家の作。】
「大阪の家具店『graf』に、いきなり若い女性が器を背負って売りに来て、わーっと広げた中から選んだのがこれ。多分、フラワーベースだと思いますが、私はワインクーラーとして使っています」。彼女がいったい何者だったのか、いまだに謎。
【金継ぎをしてまで大事に使われていた出西窯の大皿。】
「昔の出西窯のもので、大家族のおばあさんが、大切に使っていた大皿だそう。家族もみんな独立し、年老いてひとりになって、もう重くて使えないからと譲られたものを、こうしてまた私が譲ってもらう。そのご縁に面白みを感じます」
冷水希三子/ひやみずきみこ
料理家。フードコーディネーター。料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ制作を中心に、書籍、雑誌、広告などで活躍。http://kimiko-hiyamizu.com
『ku:nel』2020年7月号掲載
写真 加瀬健太郎 / 文 和田紀子 / 編集 友永文博