二十代の頃から畑づくりに携わり、それらを料理に生かすことがライフワークだった植松さん。身近な自然から四季を感じとろうとする暮らしには、そこから享受するエッセンスが、たっぷり潜んでいます。
都会の真ん中とは思えないほど広い専用庭の付いたマンション。
「十年程前、物見遊山で内覧しに来たら、夫婦揃ってひと目でこの庭に惹かれてしまったんです。結局、すぐに購入しました」と、笑う植松良枝さん。
聞けば、幼い頃から、地元・神奈川県で祖母や母親とともに、土に触れて育ったといいます。
「大学時代は、友人と山菜採りへ行くのが楽しくて。社会に出てからは、本格的に菜園を借りて、収穫した旬の野菜で料理を作ったり。土や草花は、ずっと身近な存在です」
手入れの行き届いた庭には、周りをぐるりと覆うように配されたハーブやオリーブ、スモークツリーなどの葉が、光を受けてキラキラと輝いています。
「料理のあしらいとしても、大活躍するんです。例えば、チーズにはイチジクの葉を、デザートの仕上げにはミントを添えるだけでも、お皿がパッと華やかになりますよ」と植松さん。大地とひと続きになった暮らしは、植松さんの創作の源になっているようです。
うえまつよしえ
四季に寄り添った食と暮らしを提案する料理研究家。大の旅好きとしても知られ、国内外の旅から刺激を受けた自由で大らかな料理スタイルも人気。近著に『春夏秋冬ふだんのもてなし』(KADOKAWA)等
『ku:nel』2020年7月号掲載
写真 砂原 文/取材・文 権 佳恵