家には住む人の「暮らしの姿勢」があらわれてくるものです。 ひとり暮らしなら、なおさら。何を大切にし、何を育むのか?自分らしいピースを積み上げて、快適な住まいはつくられます。「心地よさ」も「好き」も全て自分次第。
思うまま過ごせるように、 自分らしく心地よく整える
このところ、目が覚めるのはまだ 暗い頃。日が昇るまでの時間をひとしきりベッドの中で楽しみます。
「はじめは青とオレンジの段だら模様。それが、空一面、白くなる瞬間があるんです。まるで飽和状態になったみたいに。オレンジ色に変わると、後はあっという間、朝になります」
部屋中が明るくなったらゆっくりと起き出して、お風呂に浸かり、洗濯機を回して、朝食。ヨーグルトと果実、パンとジャム、紅茶。いつも通りの、一日の始まりです。
「この間、ちょっと夜更かししたら、しばらくリズムが戻らなくて。歳を重ねると、自分の時間軸で過ごすことが大切なんだなと思います」
窓から海と空が見えて、一日中、気持ちがいい。外国のアパルトマンのような、この部屋が気に入って東京から引っ越してきた高山なおみさん。すべてをゼロにして、自分と向き合いたい。絵本の仕事をきっかけに、そんな思いに駆られ、神戸・六甲で一人暮らしを始めて7年目。外国人の宿泊施設だったここは収納スペースが玄関にあるだけ、部屋にはいろいろな棚を置いています。
リサイクルセンターで見つけたもの、知人にもらったものなど、 椅子や机もテイストはさまざま、けれどしっくりとなじんでいます。
「一生懸命探したわけではなく、偶然出会ったものばかり。そういう巡り合わせが好きなんです。新品にはあまり魅力を感じなくて、惹かれるのは誰かが使っていたものや使い込まれたもの。 道端で拾うこともあります」
旅先で見つけたクロスを棚の目隠しにしたり、キッチンに小さなタイル張りのカウンターを取り付けたり、あるもので工夫して、自分らしく、使いやすく。部屋に飾る絵は時々入れ替えて、 いつも気分良く過ごせる空間に。
「東京にいた時は言葉を書きとめて家のあちこちに貼っていたんです。心に 残った言葉を覚えておきたくて、書いては貼って。だけどここは窓の景色がくるくると変わっていくから、それで十分。言葉を超えたものが目の前にあるから、必要なくなったのかもしれません。絵も毎日見ていても見え方が変わるから、空に似ていますね。どう感じるか、見る者にゆだねられているところが好きです」
ここでは思うまま、自由な自分でいられます。
『クウネル』2022年5月号掲載
写真/わたなべよしこ、文/宮下亜紀、編集/鈴木理恵