木材の温もりに、古い家具や季節のしつらいが彩りを添えている 刀根弥生さんの住まい。穏やかで静かな空気が流れていました。
刀根弥生/とねやよい
「うつわ 」店主 shizen
大学病院の医局秘書を経て、東京・表参道の器店「楓」の姉妹店「SHIZEN」の店長を務める。独立後、「うつわshizen」の店主となる。現在 月2回ほど作家ものの展示を行っている。http://utsuwa-shizen.com/
「新しいものと古いものの調和が好き」
キッチンのすぐ傍らにある引き戸を開けると、天井いっぱいのオープン棚が。数えきれないほどたくさんの器が目に飛び込んできます。
東京・神宮前にある器店「うつわ shizen」を営む刀根弥生さん。生まれは東京で幼少期は団地住まいだったそう。 結婚後、ご主人の仕事の関係で新潟に住んでいたこともあるといいます。
東京に戻ってからは調布のテラスハウスで10年ほど暮らしていました。それまでは賃貸暮らしでしたが、家を持つなら、そして、それが戸建てならまわりに何もない静かな場所がいいねと夫婦で話していたのです」
そんな刀根さんの現在の住まいは神奈川県川崎市。いろいろな物件や土地を見る一方、以前から親しくしていた挿花家の方の縁で建築家と知り合い、設計をお願いする運びになったといいます。注文住宅というと細かい部分まで決め込んだのかと思いきや……。
「あまり細かいことはオーダーせず、所有しているものの量をお伝えしたくらいなんです。収納や造り付けの家具も最低限で、箱のようなシンプルな家にしたいということをお願いしました」
1階はリビングダイニングとキッチンのひと部屋。キッチンには前述した食器スペース兼パントリーがあり勝手口へとつながっています。2階は本棚を備えた廊下があり、その左右に夫婦の寝室と客間の和室という間取り。
「吹き抜けになっていて、2階のふた部屋は扉を開ければ1階を見下ろすことができます。家族の気配が感じられて、夏は風がとおり、冬は暖気がよく回るような気がしますね」
新居に引っ越したのは2017年の秋のこと。初めは真っ白だった外壁はよい感じに黒くなり、フローリングの色もツヤを増して変わりました。
「新しいものと古いものの調和が好きなので、古い引き出しを食器棚として活用したり、古いものを点在させたりして、その組み合わせと経年変化を楽しんでいます。家も暮らしも愛着を持って育てていけたらと思っています」
『クウネル』2022年3月号掲載
写真/原田真理、取材・文/結城 歩