パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISの主宰・荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしをご紹介。第11回目は、荻野さんが一番愛着を感じるというパッサージュをお届けします。
愛着のあるパリのパサージュ
『ギャルリー・ヴィヴィエンヌ』
日本人にも馴染みの深いアーケード商店街の元祖であるパリのパッサージュ。今も26のパッサージュがパリに現存していて、パリジャン、パリジェンヌの日常に欠かせない存在です。
どれも、それぞれに個性があって素敵なのですが、今回はなかでも私が一番愛着を感じるパッサージュを紹介したいと思います。それは、オペラ座界隈にある『ギャルリー・ヴィヴィエンヌ』。
1823年にリュクスなパッサージュとしてオープンし、176mにわたる通路には、カフェやサロン・ド・テ、ワインカーヴ、古書店、インテリアショップ、おもちゃ屋さんなど、バラエティに富んだお店が並びいつもにぎやかです。
このパッサージュの見どころは、なんと言っても、当時そのままの美しいモザイクタイルの床!ガラス天井から降り注ぐ自然光に照らされたモザイクは本当に綺麗で、何度見ても心が躍ります。花と円をかたどったモチーフが大胆かつ繊細で、19世紀の職人さんの技術とセンスに圧倒されつつ、その頃のパリの華やかな空気に包まれます。
\『地下鉄のザジ』を思い出します/
そして、ここを訪れると毎回思い出すのが、映画『地下鉄のザジ』!1959年に発表されたレイモン・クノーの小説をもとに、翌1960年にルイ・マル監督が映画化した歴史に残るフランス映画の1本ですが、ザジが謎のムッシューに追いかけ回されるシーンで、ギャルリー・ヴィヴィエンヌが登場します。
モザイクで作られた円と線をたどるように、ザジがクネクネと走り回る姿がとっても印象的で、私も人目をはばからずモザイクのラインをたどって歩きたいという衝動に駆られてしまうんですよね。
こんな風に映画の世界に飛び込んだような感覚が味わえるのも、パリが昔の姿を留めてくれているおかげ。古い映画のロケ地に偶然通りかかる度に、建物や街そのものの風景を大切な文化財として保存する努力を惜しまないフランス人の姿勢に、ありがとう!と心の中で感謝する私です。
写真・文/荻野雅代