【クウネル ふた旅】映画『国宝』ロケ地の芝居小屋にときめき、城崎温泉に癒される大人の但馬旅
子育てを終えいま「また」旅に、同じ趣味を楽しめる娘と「ふたり」で旅に、久しぶりに再会した友と「いまこそ」旅に…。マチュア世代にふさわしい「ふた旅」の行き先候補にぜひ加えていただきたいのが、兵庫県の但馬エリア。そこでしか出会えない圧巻の景観、風情豊かな城崎温泉、歴史と伝統が今に生きる城下町・出石。「ふた旅」にぴったりな但馬のスポットをご紹介します。
目 次
地球の神秘を感じる「玄武洞公園」でパワーチャージ
旅の始まりは、パワースポットで元気をチャージ!最初に訪れたのはユネスコ世界ジオパーク認定「山陰海岸ジオパーク」の代表的なスポット「玄武洞公園」。160万年前に起こった火山活動で流れ出た溶岩が固まって作り出された珍しい洞窟で、国の天然記念物にも指定されています。
火山活動によって流れ出たマグマが冷えて固まる時、規則正しくきれいな割れ目が生まれ柱状の節理が形成されたそうで、その形状は見れば見るほど神秘的。
公園内には「玄武」「青龍」「白虎」「朱雀」と、中国の四方を司る四神の名前がつけられた洞窟があることから、四神のパワーにあやかりたいと願掛けで訪れる人も多いとか。またパワースポットとしても人気だそう。
難しいことはさておき、とにかく圧巻スケールの地球の神秘を目の前にすると自然と心が開放されて、なんだか気持ちが穏やかに、クリアになっていくような気がしました。
隣接するミュージアムもぜひ訪れたいスポット。「玄武洞」の歴史や山陰海岸の岩石についての展示だけでなく、石に魅せられた館長が世界から集めた、ありとあらゆる貴石・奇石・化石・鉱物などが展示されています。
種類も量も圧倒的な天然石の展示は圧巻で、「この石からいったいいくつジュエリーが作れるんだろう?」と思わずワクワク。好きな石を選んで天然石のストラップが作れるワークショップなども開催されており、鉱物好きなら1日中いても飽きないスポットです。
玄武洞ミュージアム
住:兵庫県豊岡市赤石1362番地
電:0796-23-3821
https://genbudo-museum.jp/
大自然との一体感が味わえるジオカヌーを体験
見るだけでなく体験型のアクティビティも楽しみたい!と次に向かったのは山陰海岸ジオパークの竹野浜。兵庫県の北端、旅の起点となる城崎温泉からは車で15分ほどの海岸で、その透明度は県の調査で「水質AA」ランクに認定されているそう。一面に広がる白砂の浜も「日本の渚100選」に指定されており、その美しさは折り紙付き。
ここでは奇岩や洞窟が点在する山陰海岸ジオパークをカヌーで冒険するアクティビティ「ジオカヌー」が楽しめます。川でのカヌーは何度か体験したことがありますが、広い海へと漕ぎ出すのは初めて。2人1組のカヌーでは、旅の相棒との呼吸も試されます。少し緊張しながらライフジャケットを持って浜辺へ。訪れたのは9月下旬ですが、空も海も青く澄み渡り最高のコンディション。
インストラクターが丁寧に指導してくれるうえに、想像以上に波が穏やかなので安心して沖へと漕ぎ出すことができました。慣れてくるとコントロールのコツもつかめてきて、景色を楽しむ余裕も。遮るもののない真っ青な空の下、悠々とカヌーを漕ぐ爽快感たるや!
ただ漕ぐだけでなく、海の中の不思議な洞窟「淀の洞門」を目指し、間近でその断層を見学することができました。間近で見る独特の岩層は大迫力。まるで探検のようなワクワク気分を味わいました。
カヌー体験は5月から9月までの期間限定ですが、シーズンオフの竹野浜は人も少なくのんびりしずか。美しい浜辺でぼんやり海を眺めているだけで日常を忘れリフレッシュできそうです。
メリーアドベンチャーツアーズ
住:兵庫県豊岡市竹野町切浜
電:090-3355-4047(9:00〜17:00)
https://t-motherearth.com/meri/
城崎温泉で湯めぐり&散策を楽しむ
城崎温泉は志賀直哉の小説『城の崎にて』でも知られる歴史ある温泉街。川を中心にした風情豊かな街並みに、昔ながらの遊技場やおしゃれなカフェやバー、土産物屋が立ち並びます。
最大の特徴は、趣の異なる7つの外湯巡りが楽しめること。城崎温泉では駅は「玄関」、道は「廊下」、宿は「客室」、そして外湯は「大浴場」と、街全体が一つの大きな温泉宿に例えられているそうで、どの宿に泊まっても、温泉街全体を楽しむことができるのです。
宿にチェックインしたら早めに夕食をいただき、浴衣に着替えてさっそく外湯めぐりへ。城崎温泉に宿泊するとほとんどの宿で「外湯巡り券」をもらうことができ、チェックインから翌日13時まで、7つの外湯に何度でも入ることができるのです。日帰り派には1日入浴券(1500円)もあるので、好きなスタイルで思う存分温泉が堪能できちゃいます。
日が暮れると街灯が川に反射して風情豊か。老いも若きも外国人も、みんな揃って浴衣に下駄履きで町をそぞろ歩く姿になんだかほっこり。
1日観光を楽しんだので遅めの時間からの外湯巡りだったのですが、温泉好きの血が騒ぎ、7つある外湯の中から4つの外湯を堪能しました。開放的な庭園露天風呂が人気の「御所の湯」、昔ながらの雰囲気がたまらない「地蔵湯」、名物の洞窟風呂が楽しい「一の湯」、温度が高めでじっくり温まる「柳湯」と、源泉は一緒ながらそれぞれに特徴があり、友達とおしゃべりしながらの湯めぐりは最高。
外湯巡りの券のQRコードを入り口にかざすだけなので入場も簡単。同じく外湯巡りを楽しむお客さんと挨拶を交わしたり、昔ながらの射的場をのぞいたり、夜風に吹かれながらアイスを食べたりと、温泉街ならではの町歩きも堪能しました。
今回宿泊したのは『川口屋城崎リバーサイドホテル』。開放的な大浴場と露天風呂、時間帯で貸切にできる展望露天風呂があり、宿のお風呂もしっかり堪能。但馬牛をはじめ、地産の旬の食材をふんだんに使った食事も最高でした。街歩きが楽しくなる色浴衣、お年寄りや小さな子供と一緒でも気軽に湯巡りが楽しめる送迎バスのサービスもあり、世代を問わずおすすめしたい旅館です。
翌朝は予約しておいた宿の貸切展望風呂で最高の朝風呂タイム。頭も体もしゃっきり目覚め、美味しい朝食を堪能したらチェックアウトして、次の目的地へと向かいます。
川口屋城崎リバーサイドホテル
住:兵庫県豊岡市城崎町湯島880-1
電:0796-32-2611(8:00〜20:00)
https://www.kawaguchiya.co.jp/
映画『国宝』のロケ地となった芝居小屋を見学
2日目は、但馬の小京都と言われる城下町・出石(いずし)へ。野面積みの石垣がそのまま残る「出石城跡」、日本最古年の時計台「辰鼓楼」など、歴史を感じながら町歩きが楽しめます。
出石を訪れたらぜひ立ち寄りたいのが、歌舞伎界を舞台にした大ヒット映画『国宝』のロケ地となった芝居小屋「出石永楽館(いずしえいらくかん)」。近畿地方最古の芝居小屋と言われており、兵庫県指定重要有形文化財にも指定されています。
『出石永楽館』は1901年の開館以来、昭和の文化発進拠点として多くの人たちに愛されていきた歴史ある芝居小屋ですが、芝居文化の衰退により1964年には一度閉館。その後建物は用途を失いそのまま保存されていたそうですが、伝統文化の復興を望む地元の声が原動力となり、2008年に、44年の時を経て芝居小屋として復活。歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが出演する「永楽館歌舞伎」が毎年行われるほか、寄席、ライブなど様々なイベントが開催されているそうです。
興行のない時は館内は一般公開されており見学可能。訪れたのは平日の昼でしたが、『国宝』効果もあってか多くの人が訪れていました。
改修により芝居小屋として最も華やかだった大正11年頃の姿に復原された館内は、まるでタイムスリップしたかのようなレトロな空間。レトロな手描き看板は出石の看板屋さんによるもの。広告主はすべて地元の商店で、中には今でも営業しているお店もあるそうです。
映画の情報解禁前の『国宝』ロケは地元の協力のもと極秘で行われたそうですが、座席数360と小さな舞台なので舞台も花道も近く、撮影に参加したエキストラの方がうらやましい限り!
舞台地下の奈落に入り、人力で動かす廻り舞台やセリの昇降機など貴重な舞台装置を間近で見学することも。現在は機械式のものがほとんどだそうで、昔ながらの手動の装置が大切に守られ今も現役で活躍しているのは、地元の方の愛あってこそと胸が熱くなりました。
出石永楽館
住:兵庫県豊岡市出石町柳17-2
http://eirakukan.com/
出石名物の「皿そば」を初体験
町歩きの後はランチタイム。出石は、小さな街になんと約40軒ものそば店が立ち並ぶ関西屈指のそば処。名物は「皿そば」とのことで、初めて耳にするメニューに期待が高まります。
出てきたのは出石焼きの小皿に盛り付けられた一口サイズのそば。通常は一人前5皿が目安だそうですがお腹の具合に応じて一皿単位で追加できるのが特徴です。
皿そばにはとっくりに入った出汁つゆ、生卵、とろろ、ネギ、わさびなどの薬味がセットになっており、最初は出汁のみでシンプルに、徐々に薬味や卵を加えてと味変が楽しめるので、飽きることなく最後まで美味しくいただけます。
「女性でも10皿くらいはいけますよ」とのアドバイスに半信半疑でしたが、気がつけばぺろりと10皿完食していました。
友人の分も一度に届いた皿そばがテーブルに並んだ姿は圧巻でしたが、あっという間にぺろり。
宝永3年(1706年)に、信州上田藩から出石藩にお国替えとなった仙石氏がそば職人を連れてきたことが出石そばの起源だとか。小皿スタイルになったのは幕末の頃で、屋台では持ち運びが便利な手塩皿(てしょうざら)に蕎麦を盛っていたのが始まりだそうです。
挽きたて・打ちたて・茹がきたての「三たて」製法が特徴で、なめらかでコシのあるそばは、そば好きの間でも評判。毎年4月に行われる「出石そば喰い大会」には各地から多くの人が参加するそうで、中には100皿以上食べるという強者も!
「数多くのそば店から1軒だけ選ぶのは難しい!」という人にぴったりなのが、いずし観光案内所で購入できる「出石皿そば巡り巾着セット」(2200円)。絹の風合いが美しい出石ちりめんに永楽通宝を模した専用の通貨が3枚入っていて、通貨1枚で1軒3皿ずつ、合計3軒9皿を食べ歩くことができるお得なセットです。
本格的なそば打ち体験など出石観光をより深く楽しめる情報に出会えるので、まずは観光センターに立ち寄ってみることをおすすめします。
いずし観光センター
住:兵庫県豊岡市出石町内町104-7
電: 0796-52-6045 (9時〜17時)
豊かな自然や伝統を次世代へ繋ぐ「ひょうごフィールドパビリオン」
はじめて訪れた但馬エリアで感じたことは、豊かな自然や伝統を大切にし、地域一丸となってユニークな観光体験を発信していること。
現地でお会いした兵庫県の観光担当者に話を聞いてみると、大阪・関西万博への参加をきっかけに、兵庫県の魅力を伝える「ひょうごフィールドパビリオン」という取り組みを行っているそうで、地元の人が主体となり、地元ならではの文化をより身近に体験できるプログラムを発信しているのだとか。
但馬の自然で育まれた苔を切り口に自然の中で「苔テラリウムのワークショップ」を行うリトリート体験、猟師に同行して狩猟見学やジビエ料理体験ができるゲストハウス宿泊など、ほかにでは体験できないユニークなプログラムも注目を集めているそうです。
まだまだ奥の深い但馬エリア、必ず「ふた旅」訪れたい場所になりました。
ひょうごフィールドパビリオン
取材・文 吾妻枝里子