宮本亞門さんが推薦。京都の仏像と建築の奥深い美に触れられる名寺3選

1300年に及ぶ京都の歴史と文化を形づくってきたのは、神社や寺院という存在。京都とその神社仏閣を愛する演出家・宮本亞門さんに、お好きな祈りの場所を聞きました。

PROFILE

宮本亞門/みやもとあもん

演出家。1958年生まれ。ミュージカルからオペラまで多くの作品を手がける。10月8日~31日、パルコ劇場にて『チョコレートドーナツ』を再演。大阪、熊本、宮城、愛知公演あり。

美しく崇高な仏像と建築の奥深い美に触れる

「僕はちょっと変わった子供で、小学校の高学年くらいから京都や奈良へ夜行列車で出かけて、寺院や仏像を見に行くことが大好きだったんです。中学卒業のころには日本美術史の研究家になりたいって先生に言ったくらい夢中でした」

そんな筋金入りの日本美術愛好家の宮本亞門さんが紹介してくれたのは、3つの寺院。長年京都に通いつめ、寺社の建築や仏像を見つめ続けてきた亞門さんの、とびきりのチョイスです。

三十三間堂では、千一体の千手観音や仏様たちがいつも清らかなほほえみでもって迎え入れてくれます。そのお姿は壮麗で、現実世界を忘れさせてくれるような美しさ。何度も堂内を巡り、じっくり自分と向き合い、心を落ち着かせてくれるお寺です」

平等院は京都市内からはやや離れた宇治市に位置しますが、「あえてそこまで行く価値が絶対にある素晴らしい場所。鳳凰が羽を開いたような建築のバランスが繊細で、息をのむほど美しい」とその美を絶賛します。お堂が池に映り込む優美さ、中におさめられた雲にのって楽器を奏でる雲中供養菩薩たちからは、「天上界の軽やかな音楽が聞こえてくるよう」。

桂離宮や圓光寺など、庭園の美も格別です。ここで紹介するのは洛北に位置する圓通寺の庭。遠く比叡山を借景として、「京都であって京都でないような自然の荒々しさも感じられる雄大な枯山水の庭。観光地の雑踏から遠く、本来の京都の地場を感受できる貴重なお庭だと思います」。

人間が人知を超えて作ったものに興味があるという亞門さん。僧や仏師、宮大工などなど、さまざまな人の英知が集まって生まれた神社仏閣や仏像の壮大さに身が震える思いなのだとか。

「どんな思いでこれが作られたのか。寺院の階段を上がっていってお堂の中に浮かび上がる仏像、そこに射す光、朝に見るのと、夕方に見るのでは違うし、季節によっても変化するんです」

演出家として役者を選び、照明や装置、衣装を作り上げ、劇場の中にひとつの芝居を完成させる亞門さんの仕事。寺社を詣で、その美を全身で感じることは、舞台演出と底のほうでつながっているのかもしれません。京都に行っても食べ物は人任せ、この時期にはここ、とお寺を目指して歩く亞門さんの熱い思いが伝わってきます。

壮麗で清らかな仏様たちに心の平安を感じ取る|蓮華王院 三十三間堂

蓮華王院の本堂として、平清盛の寄進によって建てられた。鎌倉時代の仏師・湛慶らが手がけた千一体の観音様の美しさ、壮麗さは圧倒的。千体仏の前に立ち並ぶ風神、雷神などの30体の等身大の仏像も力強い。

蓮華王院 三十三間堂

住:京都市東山区三十三間堂廻り町657
電:075-561-0467
営:8:30~17:00(4月1日~11月15日)、9:00~16:00(11月16日~3月31日) 受付は閉堂30分前まで
休:無休
拝観料:一般600円
WEB: https://sanjusangendo.jp/

天上の音楽が聞こえてくるようなエレガンス|平等院

「軽やかに浮遊しているような建築が珍しく、なんともエレガント」と亞門さん。仏の後ろには極楽浄土図が。写真提供/平等院

1052年に関白藤原頼通が開いた平等院。鳳凰堂はその阿弥陀堂として、翌年、落慶。完璧なまでにシンメトリーで、池の中島に建てられているため、あたかも極楽の宝池に浮かぶ宮殿のような造形が美しい。

鳳凰堂には雲の上で楽器を奏でたり、舞を舞っている雲中供養菩薩が。26体は院内のミュージアム鳳翔館に収蔵されている。

平等院

住:宇治市宇治蓮華116
電:0774-21-2861
営:鳳凰堂内部拝観9:30~16:10(各回50名定員、受付時間9:00~)、庭園8:30~17:30、平等院ミュージアム鳳翔館9:00~17:00(16:45受付終了)
休:無休(茶房・藤花は月・火・水休)行事などにより、内部拝観を休む場合もあり
拝観料:一般600円、内部拝観志納金300円
WEB:https://www.byodoin.or.jp/

比叡山を借景とした枯山水の庭に魅了される|圓通寺

一面に青苔がおおう平らな庭に作られた枯山水。比叡山を築山に見立て、見事に景色の中に取り入れている。

修学院離宮の設計を行った後水尾上皇の離宮が1678年に臨済宗のお寺に改められ、今に至る。杉とヒノキの間から比叡山を望む雄大な借景式の枯山水庭園で知られ、四季折々の風情を楽しむことができる。

圓通寺

住:京都市左京区岩倉幡枝町389
電:075-781-1875
営:10:00~16:30(4月~11月)、 10:00~16:00(12月~3月)
休:水曜、12月末に3日間(不定)、特別法要日
拝観料:一般500円
WEB:https://www.kyoto-entsuji-teien.com

『クウネル』11月号掲載 取材・文/船山直子

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