岡本太郎さんのアート巡りレポート。大阪「太陽の塔」に始まり、銀座、四ツ谷の隠れたスポットも

学芸大学の生活雑貨の店『MIGO LABO』の店主であり、フォトグラファーとしても活躍する、クウネル・サロンプレミアムメンバー石黒美穂子さん。そんな石黒さんが最近熱中しているという岡本太郎さんのアート巡り。その様子を紹介してくれました。

「太陽の塔」が一般公開に

「念願の太陽の塔の内部観覧で岡本太郎熱に火がついて、都内のパブリックアートも巡っています」

太陽の塔」は1970年 日本万国博覧会(大阪万博)開催時に芸術家・岡本太郎がデザインし建てられました。半世紀経った今も人々を惹きつける唯一無二の存在。大阪万博閉幕後に取り壊される予定でしたが市民の撤去反対の署名運動で永久保存され、2020年に登録有形文化財に登録されています。

長い間、内部は一般公開はされていなかったのですが耐震改修と内部復元を経て、2018年に公開され、大人気。公開後、何度か大阪に行く機会はあったのですがなかなかタイミングが合わず、昨年の秋に念願の内部観覧が出来ました。

いよいよ念願の「太陽の塔」へ

太陽の塔が写っている
太陽の塔は大阪城や通天閣と並ぶ大阪のシンボル。 「黄金の顔」が秋の日差しでキラキラ輝いています。
太陽の塔の入り口で写真を撮る石黒美穂子さん
館内入り口前にて。 内部観覧は前日までの事前予約制なので入館はスムーズです。
太陽の塔の構想スケッチが展示されている
入り口を入ると岡本太郎の描いた太陽の塔の構想スケッチが日付順に展示されています。
/

構想スケッチの展示スペースを抜けると地底の太陽ゾーン。大阪万博当時、地下空間に展示されていた第4の顔と呼ばれる「地底の太陽」。閉幕後、行方不明となっていましたが、内部公開に合わせて当時の資料を元に再生・復元されました。

当時地下に展示されていた世界の仮面や神像、土偶の一部は今もなお展示されており、当時の雰囲気を体感できます。地底の太陽にプロジェクションマッピングが投影されると大音量で祈りのような音楽が流れ、仄暗いフロアが一変。

地球や生命、文明などを示唆するような映像が太陽の顔を彩っていきます。プロジェクションマッピングは3パターンあり、数分おきに投影されます。どれもクオリティーが高い素晴らしい作品で気がつくとフロアに釘付けでした。

館内の地底の太陽ゾーンのフロア写真
プロジェクションマッピングが始まる前の地底の太陽。 館内の地底の太陽ゾーン及び生命の樹の1階展示フロアは撮影可能です。
館内の地底の太陽ゾーンのフロア写真
プロジェクションマッピングが始めるとマグマが動き出したような臨場感。 大きな爆発音が鳴り響き、一瞬も目を離すことができません。
館内の地底の太陽ゾーンのフロア写真
直径約3メートルの顔の表情は刻々と変化。 凄い迫力に思わず(芸術は爆発だ!)と岡本太郎の名言が頭をよぎります。
館内の地底の太陽ゾーンのフロア写真
サイケデリックな模様の顔もフォトジェニック。
館内の地底の太陽ゾーンのフロア写真
大きな口を開けて何かを訴えて叫んでいるような顔。
/

地底の太陽を満喫し、「生命の樹」のあるスペースに進みます。高い吹き抜けに伸びた生命の樹を取り巻く無数の生物模型が一体となって、思っていたより壮大なスケールに驚きました。

生命の根源から始まる展示は原生類時代、三葉虫時代、魚類時代、両生類時代、は虫類時代、哺乳類時代に分かれています。上に昇っていくと各年代ごとを代表する生物模型で生命の進化の過程がよく分かる展示になっています。

生命の樹と赤い壁と並んでいる石黒美穂子さん
生命の樹と赤い壁のコントラストが幻想的な雰囲気を醸し出します。
太陽の塔の中の階段
大阪万博当時はエスカレーターでしたが現在は階段に改修されています。 階段を登りながら単細胞生物からクロマニョン人までの生命の進化が見られます。
原生類時代のアメーバをイメージしたオブジェクトがたくさん並んでいる
原生類時代のアメーバなどは今にも動き出しそうなユーモラスな佇まい。
太陽の塔内に展示されている生物模型の名称が書かれている解説プレート
展示されている生物模型の名称が書かれている解説プレート。
/

生命の樹の周りには太陽虫と呼ばれる球状の生命体をかたどったものが浮遊しています。

私はこの太陽虫を見て、ヨーガン レールさんの企画展「文明の終わり」に展示されていた廃品プラスティックで作られた照明が思い浮かべました。太古の生命体が現代の環境問題になっている自然に還ることのないプラスチックで作られた物を連想させるとは皮肉ですね。

太陽の塔内の生命の樹と赤い壁
クラゲや太陽虫はLEDで色を変化させながら深海のような浮遊感。
太陽の塔内の生命の樹と赤い壁
生命の樹にある全ての生命体には畏敬の念を感じます。
/

展示の最上階にいたスタッフから大阪万博当時の様子や改修された箇所など興味深い話を伺うことが出来て、大満足。太陽の塔を出て余韻に浸り、万博公園の閉園時間までゆっくりと散策。

太陽の塔の後ろ姿
どこから撮ってもフォトジェニックな太陽の塔。 背面の黒い太陽の顔が哀愁を帯びています。
大阪万博当時、お祭り広場を覆っていた大屋根は一部
大阪万博当時、お祭り広場を覆っていた大屋根は一部が残存されています。
万博公園のエキスポ模様のマンホール
万博公園のマンホールはさりげなくエキスポ模様。
遠くから見た太陽の塔
閉園の音楽と太陽の塔に見送られ、万博公園を出ました。
/

年末は上野・東京都美術館で開催されていた「岡本太郎展」へ

年末には上野・東京都美術館で開催されていた「岡本太郎展」も鑑賞。初期から晩年までの主要な代表作がずらりと揃っていて、見応えある展示でした。芸術家を目指した若かりし日のパリで描かれた絵画や第二次世界大戦中の上官の肖像画など今まで知らなかった一面を垣間見ました。

また、会場内は撮影可能な作品が多く、老若男女問わず多くの人があちこちで撮影していたのも印象に残っています。

岡本太郎展の大きなポスターと並んで写真を撮る石黒美穂子さん
「岡本太郎展」は大阪、東京を経て、3月まで愛知で開催中。

東京都内には岡本太郎のパブリックアートが見られるスポットが幾つかあります。渋谷駅の連絡通路にある「明日の神話」や青山通りにある都民の城(旧こどもの城)前にある「こどもの樹」を見たことがある方は多いのではないでしょうか?

他にも銀座の「若い時計台」は意外と知られていない穴場スポット。岡本太郎好きな私もうっかり通り過ぎてしまいそうになった四谷にある「歓び」。

作品が気になった方は是非、一度、立ち止まって鑑賞してみて下さい。岡本太郎の懐の深さに感服し、一段と岡本太郎を身近に感じて好きになるはず。

井の頭線とJRの渋谷駅を結ぶ連絡通路にある巨大壁画「明日の神話」
井の頭線とJRの渋谷駅を結ぶ連絡通路にある巨大壁画「明日の神話」。忙しく行き交う通行人を見守る渋谷の賑わいと平和を見守っているようです。
作品「こどもの樹」が置いてある
「こどもの樹」は子どもたちの感情がカラフルな顔で表現されていて、自由で大らかな雰囲気。見ていると気持ちが和みます。
東急プラザ銀座の裏の数寄屋橋公園にある「若い時計台」
「若い時計台」は東急プラザ銀座の裏の数寄屋橋公園にあります。 後ろの戦前に建てられた中央区立泰明小学校の丸い校舎との相性が抜群です。
四谷の持田製薬株式会社の前に設置されている「歓び」という作品
偶然見つけた四谷の持田製薬株式会社の前に設置されている「歓び」。町の風景に馴染んだ岡本太郎作品です。
/

SHARE

この記事の
プレミアムメンバー

石黒美穂子

フォトグラファーとして女性誌、WEBなどで活躍。生活雑貨のセレクトショップ「MIGO LABO」(東急東横線・学芸大学駅)のディレクターも務める。
https://www.migolabo.com/
Instagram : @migolabo @ishiguromihoko

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)