人気料理家・ワタナベマキさん、体の調子を整える好きな食材3選とは?家庭料理の幅が広がるアイデアとコツを披露

人気料理家のワタナベマキさんが好きな食材として挙げてくれた3つのもの。一見、地味に見えますが、 それぞれがすごいパワーと可能性を持っているのです。

PROFILE

ワタナベマキ

料理家。シンプルでセンスのいい料理が人気。『ワタナベマキのいまどき乾物料理』(NHK出版)、『お医者さんが教えてくれた一年中冷え知らずごはん』(KADOKAWA)など著書多数。

梅、乾物、スパイスの力ですこやかに暮らす

おしゃれでシンプルな家庭料理をさまざまなメディアで提案しているワタナベさんは夫と高校生の息子との3人暮らし。仕事だけでなく、日々の家族の料理作りも大切な日課です。忙しい毎日の、大きな助けになっているのが、ワタナベ家の冷蔵庫や収納庫でスタンバイしているさまざまな乾物、スパイスに大好きな梅干し。やや地味な印象のこれらの食材をワタナベさんはどんなふうに使って、楽しんでいるのでしょう。

「子どものころから梅味がともかく好きなんです。そのままおにぎりにしたり、お茶と一緒にいただくのも好きですが、梅干しは調味料としても、とても優秀だと思うんです。よく日本料理の味付けの基本は『さしすせそ』って言いますよね。砂糖、塩、酢、しょうゆ、味噌っていうことなのですが、私はそこに梅をプラスして『さしすせそう』にしたいくらい。本当にいろいろな料理に梅干しを活用しています」

毎年、15〜20キロくらい!の梅を和歌山、奈良、小田原から取り寄せていて、時期になると梅干し、梅酒、梅酢を仕込むのはもう20年近く続いている習慣。しょうゆや塩の代わりに梅を使って煮物を味付けしたり、炒めものに使ったり、その応用範囲は広いのです。梅の殺菌効果、免疫力アップの力も、もちろん大切。「梅エキスをお湯で割って毎日飲んでいます」

乾物

ひじき、きくらげ、干しシイタケ、あらめなど、乾物は多種多様。ワタナベさんは海辺の道の駅などで購入することも。「ひじきや海苔が豊富な伊豆の下田は乾物天国ですよ」

梅干し

キッチンの一角に鎮座する梅、梅、梅。右側は仕込み中の梅シロップ、壺には梅干し、一番左奥のガラスのキャニスターには梅干しをウーロン茶と氷砂糖で漬けた茶梅が並ぶ。

スパイス

左側の一列が一番頻繁に使うスパイスだそう。ビンのキャップに中身が分かるように文字の印がある。カレー粉やこしょうの缶やビンもまとめて収納している。

体の調子も整えてくれる、日々のごはんの土台です

切り干し大根や高野豆腐、切り昆布、ひじきといった乾物も大好き。「戻すのが面倒とか、調理法がわからないというご意見を聞きますが。でも乾物類は保存もきくし、あるととっても安心。素材の味もうま味も凝縮されていて、干した大根や海藻は生のまま食べるより、栄養価がぐっと上がるんですよ」

昔ながらの茶色い〝おばあちゃんの味〟的なお惣菜もしみじみおいしいけれど、そこはワタナベさん、今のセンスを生かした新しい乾物料理を提案しています。

そしてキッチンの引き出しにずらりと並んだスパイスの小瓶たち。ざっと30~40種類は揃っているようです。こちらも毎日の食生活に欠かせないアイテム。スパイスには新陳代謝を上げて体を温めたり、体内の余分な水分を排出する薬効があるといわれています。

「これから梅雨から夏に向かって体には厳しい季節が始まります。冷房などで、どうしても体が冷えやすい時期。私は夏でもおなかにカイロを貼ったり、腹巻をしたりして冷えを予防するようにしているんですが、スパイスを摂ることも冷え対策として有効です」

おいしい上に体の調子を整えてくれるスパイスや梅干し……ワタナベさんのキッチンの陰の主役なのです。

L字型の調理台にアイランドの作業台、大ぶりなグレーのタイルがスタイリッシュで印象的。

キッチン脇に並んだ7種類も揃った塩に砂糖の壺。中には梅酢を加工して作られた「梅塩」も。おにぎりにぴったり。

柔軟に自由に使って、料理の幅が広がります

今日ワタナベさんが作ってくれたのは、切り干し大根を使った春巻きとトウモロコシに梅干しをプラスした炊き込みごはんの組み合わせ。

春巻きの具がしょうがと桜エビを加えた切り干し大根という意外な組み合わせ。ゲストに出しても喜ばれる素敵な一皿。五目春巻きは材料を揃えるのも、前もって具を炒めるのも手間がかかりますが、この春巻きは具材もシンプル、プロセスも手軽です。注意するべきは、戻した切り干し大根の水分をちゃんと絞ることだそう。

「干しシイタケと同じように、切り干し大根の戻し汁もとてもいいだし汁になります。春巻きのように戻し汁を使わない場合でも、取っておいてお味噌汁や煮物のだしに使ってください。捨てるのはもったいないです」

夏のお楽しみのトウモロコシごはんに、ワタナベさんは梅干しをプラスして炊き込みます。

「トウモロコシの甘味だけより、梅の酸味が加わったほうが絶対おいしい、大人の味になりますよ。このごはんは梅の塩気だけで作っているので、減塩効果もあるのです」

乾物はしょうゆとみりんで煮る、梅干しはごはんのお供……そんな昔ながらの食べ方も大切だけれど、柔軟な発想とアイディアで家庭料理の幅はこんなに広がるんだ、と実感します。

長期保存ができて、栄養価もアップ

乾燥をすることで食品の水分が抜けて、カビや雑菌がつきにくくなる乾物。素材の持つ栄養も凝縮し、生で食べるよりうま味がアップ。たとえば切り干し大根の場合、食物繊維やカルシウム、鉄分などが生食よりも大幅にアップするそう。賞味期限はあるけれど、かなり長期間、常温での保存がきき、非常食としても活躍する優秀な食材。戻し方にはそれぞれのルールがあるが、気軽に日々の食卓に取り入れたいアイテムだ。

1ℓ入りの容器に昆布と干しシイタケを2、3個入れて一晩おくのが、普段使いのだし。戻したシイタケは味噌汁などに使う。

乾物は湿気を嫌う。開封して残ったら、保存袋に入れ替えて冷凍保存を。解凍する必要もなくこのまま調理に使える。

「切り干し大根の春巻き」と「梅トウモロコシごはん」

「切り干し大根の春巻き」の作り方

応用範囲の広い春巻きだけれど、切り干し大根を巻くのはとても新鮮、そしてとても合うのです。

◎材料(2人分)

切り干し大根30g、桜エビ6g、 しょうが千切り1かけ分、大葉10枚、春巻きの皮5枚、 塩小さじ1/3、こしょう適量、 揚げ油適量、 黒酢、しょうゆ各大さじ1

A:薄力粉、水各1 大さじ

◎作り方

1.切り干し大根はさっともみ洗いし、かぶるくらいの水に6分浸して戻し水気をぎゅっと絞り、食べやすい長さに切る。粗く刻んだ桜エビと塩、しょうがを加えて混ぜる。

2.春巻きの皮にの1/5量をのせて巻く。

3.巻き終わりに、合わせたAをつけてとめる。

4.鍋に入れた冷たい油にをいれて中火にかける。時々返しながら全体がきつね色になるまで揚げる。大葉に巻き、こしょう、黒酢としょうゆを合わせたたれにつけて食べる。

切り干し大根など火を通す必要のない具材なので、たっぷりと巻いても問題なし。

揚げ油が冷たいうちに投入し、ゆっくり加熱。皮の水分が抜けてからっと揚がる。

「梅トウモロコシごはん」の作り方

調味料としての梅干しを愛するワタナベさん。主張しすぎずほんのり香ってごはんのアクセントに。

◎材料(2人分)

トウモロコシ2本、梅干し2個、米1.5合、酒大さじ1、水300ml、昆布(表面をふく)5㎝角1枚

◎作り方

1.米は洗いざるにあげる。

2.トウモロコシは芯から実を削ぎ落とす。

3.鍋に昆布、1、2の実と芯を加え、ちぎった梅干し、酒、水を加え蓋をして強火にかける。

4.煮立ったら弱火にして12分加熱、10秒強火にして火を止め、10分蒸らす。

5.昆布とトウモロコシの芯をのぞき、梅干しを崩して混ぜる。

梅干しはタネのまわりにうま味がたっぷりあるので、果肉とともにタネも炊き込む。余ったタネをまとめてしょうゆに漬け込んだ「梅しょうゆ」もおいしいのだとか。

『クウネル』2023年7月号掲載
写真/柳原久子、取材・文/船山直子

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『クウネル』No.121掲載

料理好きな人のいつものごはん

  • 発売日 : 2023年5月19日
  • 価格 : 980円 (税込)

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