話題のフリー校正者・牟田都子さんが推薦する「暮らし上手」になれる本3選

フリー校正者として活躍し、2022年に上梓した著書『文にあたる』(亜紀書房)も話題の牟田都子さん。1日中家で仕事をすることもあって、 家を整えることやインテリアに大きな関心があるという牟田さんに、「生活」をテーマにした3冊の愛読書を紹介してもらいます。

PROFILE

牟田都子/むたさとこ

1977年生まれ。図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年からフリー校正者に。著書『文にあたる』(亜紀書房)が好評。

『有元葉子 私の住まい考』有元葉子

20代で図書館に就職したタイミングでひとり暮らしを始めた牟田さん。勤め先でも立ち寄る書店でも、料理やインテリアなど暮らし周りの本を多く手にするようになりました。中でも夢中になったのは「私の家づくりの師」という有元葉子さんの著作。

『私の住まい考』では東京、信州、イタリアにある彼女の家と暮らしが、美しい写真とともに紹介されています。 「機能性や実用面も考えつつ、世界中で集めた籠を違和感なく並べたり、一つのテーブルに5色の椅子を合わせたり。卓越したセンスに憧れます」

『有元葉子 私の住まい考』有元葉子(平凡社・1,760円)。洗剤はおろか布巾まで目に見えない場所に収納する徹底した美意識。「マネはできなくても写真を眺めているだけで楽しい」。

『暮らしっく』高橋久美子

一方、高橋久美子さんの古い一軒家での暮らしを綴ったエッセイ『暮らしっく』はゆるい雰囲気が魅力です。「見た目が最優先ではなく、使いやすさを考えて道具は出しっ放しというように、これなら自分でもできるかもと思わせてくれます。ご近所と気軽につながる開放的な精神やお下がりの服でファッションショーを開くやわらかな発想はお人柄。反面、ひとりで深く潜って考える詩人の部分も感じます」

『暮らしっく』高橋久美子(扶桑社・1,650円)。東京では文筆生活、故郷の愛媛では農業と、二拠点生活を始めた著者。梅仕事に励み、野菜を育て、物を捨てない暮らしが綴られる。

『高峰秀子ベスト・エッセイ』高峰秀子 編/斎藤明美

最後の『高峰秀子ベスト・エッセイ』は5歳から55歳まで映画界で大活躍した女優の精選エッセイ集。「何よりキレのいい文章が素晴らしい。ほとんど学校に行けなかったのに、これだけの教養と文章力を身につけたすごさがある。自宅を小さくし、物や人間関係も整理して、きれいにこの世を去った姿に、自分のこれからの人生を考えたりも。どの本も、すべては取り入れられなくても精神は学べますね」

『高峰秀子ベスト・エッセイ』高峰秀子 編/斎藤明美(ちくま文庫・946円)。「カラリとした筆致に引き込まれます」。司馬遼太郎など著名な文化人とも宅配便配達員ともフラットにつきあう人間性も魅力。

新刊チェック

食と料理への情熱にあふれる名エッセイ

『料理発見』甘糟幸子(KTC中央出版・1,760円)。ʼ86年刊行の食エッセイの復刊。牛スジや骨つきラムに果敢に挑むかと思えば、葛切りや朝茶に繊細に向きあう。今ほど食情報のない時代に、好奇心の赴くまま、気になった食材や料理を自らの手で試していく著者。その情熱と料理の面白さが全編から伝わります。

 

僧侶が教える 怒りを手放すワザ

『怒る技法』草薙龍瞬(マガジンハウス・1,430円)。怒りのタネには事欠かない現代。我慢したり切れたりせず、怒りをコントロールするための指南書です。必要な時は正しく怒り、怒っても仕方ない場合にはワザを磨いて対処と、著者は具体的なテクニックを伝授します。随所に挟まれる仏典からの言葉も滋味深い。

『クウネル』2023年7月号掲載 取材・文 丸山貴未子

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『クウネル』No.121掲載

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