静岡・沼津で暮らしの道具の店『hal(ハル)』を営む後藤由紀子さん。50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。
そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。
■夏の終わりから着付けを習い始めました。
9月の末頃から着付けを習い始めました。
着物は自分でもいくつか持っていたのですが、自分では着られなかったので思い切って教室へ行くことに。
最近は着物を洋服のようにさらりと着こなしている素敵な大人が多いような気がします。
もともとは私の母や姉も着物が好きで、お正月や季節ごとの特別な集まりのときなどには決まって和装。思えば、子どものときの授業参観も母はいつも着物姿でした。
着付けを習い始めて知ったことは、昔に比べて、手軽にできるように便利になってきているということ。
紐を何本も使わなくていいようにゴムがついているクリップがあったり、衣文抜きにベルトを通すところがあり、それを使えば衣文が抜かれた状態になっていたり。
洋服のようにとまではいかないまでも、できるだけ手軽に着物を楽しめるような工夫がされているのかもしれませんね。
いま6~7回通ったところですが、ひととおりは着られるようになったところ。着付けを習うと、出先で調節したり直したりできるのがなにより嬉しいのです。
気崩してはいけないけれど、よい具合に調整する、その技を身に着けたいと思っています。
■コーディネートの組み合わせが楽しいのが着物ならでは。
私は身長が低く、なで肩なことがコンプレックスでした。でも、なで肩は着物にはわりと良いとされていますし、着丈の調整がしやすいのも着物ならでは。どんな体型にも合わせやすいのが着物の魅力のひとつだと思います。
また、着物と帯の色合いやポイントになる帯留めの合わせ方など、組み合わせは無限大。
形がある程度、同じこともあるため、その合わせ方次第で印象がガラリと変わることが面白いです。
私はもっぱら渋めのものが好き。柄は小紋や紡ぎ、色はグレーや紺などに惹かれます。
和装のお手本は着物をさらりと着こなす、おしゃれ上手の先輩方のほか、着付け教室の先生です。先生も渋めのものがお好みなようで、いつも素敵だなと眺めています。
ホテルのロビーや新幹線のホームなどでも着物姿の方を見ると、ついつい目がいってしまいます。ただし、ジロジロと見るのは要注意ですね(笑)
■お手本の本を眺めては、イメージトレーニングをしています。
また、私が着物に惹かれ始めたきっかけは、 以前、女優の樋口可南子さんの和装を女性誌で見たことでした。
それまでは、着物というとハードルが高いうえに「いかにも」という印象があったのですが、その着こなしは渋めの色合わせにヘアは短いスタイル。それがとても自然体で美しくて、「こういう風に着物を着てもいいんだ」と思ったことをよく覚えています。
そのページの着物まわりのスタイリングなどをされていたのが、文筆家でもある清野恵里子さん。和装に関する著書も多く出されていて、着物や帯、帯揚げ、帯締めの組み合わせが素晴らしいのです。
同じものはとても買えませんが、清野さんの取り合わせを見てはイメージトレーニングに励んで、アンティークのものなどを探しています。
大人になって習い事をするとは、子育てもひと段落して時間にも心にも余裕が出たのだなと実感しています。
目標は、来年のお正月に自分で着物を着ることです。