静岡・沼津で暮らしの道具の店『hal(ハル)』を営む後藤由紀子さん。50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。
そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。
■映画は必ず映画館で。ひとりで観に行くことが多いです。
年々、秋が短くなってすっかり寒い日も多くなってしまいましたが……。今回は芸術の秋ということで映画のお話をしたいと思います。
時間があると映画を観に行くようにしています。微力ながらも映画業界を応援したいという気持ちがあるので、必ず映画館へ行くことに決めています。
夫は映画を観るとすぐに眠くなってしまうので、レディースデイにひとりで行くことが多いです。子育て中も、子どもたちのお世話をひととおりしたら、寝かしつけは夫にお任せしてひとりでレイトショーを観に行くこともありました。
好きな映画はドキュメンタリーや実話を基にしたもの。時代背景に重きを置いたものも好みです。
ひとつ映画を観に行くと、予告やパンフレットで、先々に上映する作品を知ることができるので、「面白そう!」「あれもあれも観たい!」となり、続けて映画館へ足へ運ぶことが多くなります。
最近はすぐに忘れてしまうので(笑)、映画を観たら備忘録的に半券を写真に撮ってちょっとしたコメントとともにインスタグラムに残すようにしています。
今回も、インスタを見返してみたら、「ああ、これは音楽が良かった」「これは家族愛の描き方が素敵だったな」など思い出しました。
今年、私が観た映画の中で、とくに心に残った3つの作品をご紹介します。
■母が子を見守る大きな愛を感じて。
一本目は現在も公開中で話題になっている『さかなのこ』。
さかなクンこと魚を愛してやまない小学生の「ミー坊」が仲間や家族とともに成長していく姿を描いた作品で、なにより主演の「のんさん」の性を超えた演技が素晴らしかったです。
そして、語らずにはいられないのは、さかなクンのお母さんの大きな愛。あのお母さんあってこそのさかなクンなのだなと納得。
「みんなと一緒でなくていい」という母の広い心と、子どもの「好き」を存分に伸ばしてあげられる親心は素晴らしいし見習いたいと思いました。
『さかなのこ』
監督・脚本/沖田修一
出演/のん、柳楽優弥、夏帆ほか
配給/東京テアトル
https://sakananoko.jp/
全国上映中
※上映時期などは変更の可能性があります。公式サイトを確認のうえ、各映画館へお問い合わせください。
■ビーチボーイズの魅力を再確認できる一本。
次に紹介するのは、『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』。ビーチボーイズのリーダーでボーカル・ベースを担当するブライアン・ウィルソンに密着したドキュメンタリー作品です。
洋楽好きとしては、ミュージシャンのドキュメンタリーものは外せません。私は、CDについてくるライナーノーツ(解説文のようなもの)を読み込むのが好きなので、洋楽のCDを買うときは必ず日本語に翻訳されたものを購入しています。この映画は、そのライナーノーツを読むときのようなワクワク感が感じられ、いままで知らなかったビーチボーイズの顔や舞台裏を知ることができて興味深かったです。
『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』
監督/ブレント・ウィルソン
https://www.universalpictures.jp/micro/brian-wilson
全国上映中
※上映時期などは変更の可能性があります。公式サイトを確認のうえ、各映画館へお問い合わせください。
■どんな時代だとしても、楽しむ気持ちは持っていい。
最後の作品は『ベルファスト』です。北アイルランドのベルファストという土地を舞台にした映画で、主人公は映画や音楽をこよなく愛する9歳の少年。家族や友達に囲まれて成長する彼ですが、1969年、北アイルランド紛争によって分断されてしまいます。
紛争をテーマにした作品だけにシビアな内容ではありますが、辛く厳しい中にもお楽しみがちりばめられていて温かな気持ちになります。いま現在も戦争が起こっていますが、どこかに温かい時間があるはずと思わせてくれる作品です。また、出演者の服装やお家もおしゃれで、それを見るのも楽しめました。
『ベルファスト』
監督/ケネス・ブラナー
製作国/イギリス
https://belfast-movie.com/
全国絶賛公開中
※上映時期などは変更の可能性があります。公式サイトを確認のうえ、各映画館へお問い合わせください。