【目利きが選ぶフランス映画】独特の世界観をつくる重要な装置、アパルトマンが印象的な4つのシネマ

cinema1/『ぼくを探しに』

幼い頃、両親を失った主人公は、それ以来言葉を失ってしまう。成長しピアニストになった彼が、自分の過去を探したいと願ったとき同じアパルトマンに住む謎めいたマダムと出会う。彼女の部屋はまるで菜園、緑にあふれていた。淹れてもらうハーブティーには不思議な効能がありそうだが、過去へつながる端緒は見つかるのか。「アパルトマンで緑だらけという圧倒的なビジュアルが私自身の緑の多い部屋と重なって引き込まれました」と古牧さん。2013年製作。photo: aflo

cinema2/『モン・パリ』

カトリーヌ・ドヌーブとマルチェロ・マストロヤンニのコンビによるコメディ。美容師と自動車学校の教員のカップルは一人息子も大きくなり、そろそろ正式な結婚をと思っていた頃、子どもを授かる。でも妊娠したのは夫の方だった!「昭和っぽいというか、そのころの人情あふれる世界が背景です。70年代のモンパルナスのアパルトマンの様子はスタイリッシュとはまた違う生活感もあり、かわいく時代性も出ていて、今また楽しく感じます」と古牧さん。壁紙インテリア、照明のスタイル、色使いなど映画的に作られているにしても華美でなくつつましやかでおしゃれな世界。1973年製作。photo: aflo

cinema3/『デリカテッセン』

『アメリ』(2001年)で有名なジャン゠ピエール・ジュネ監督の長編デビュー作。終末戦争後のすさんだパリの一角、肉屋に迷い込んだ男と、彼を挽いてしまおうと目論む肉屋との攻防で階上のアパルトマンは上を下への大騒ぎ。「ホラーのようでブラックコメディ? 不思議でキッチュな映画です。パリのアパルトマンはもともと妄想を豊かに膨らませられる場所ですよね。迷路みたいなのもワクワクします。そんな場所だというのを生かしてお話が作られていました」とはなさん。完璧なセットで作られた変なアパルトマンで繰り広げられる寓話、その味わいもフランスならでは⁈ 1991年製作。photo: aflo

cinema4/『それでも私は生きていく』

シングルマザーである主人公が娘と暮らす小ぶりなアパルトマン、彼女の父親で病気から生活が立ち行かなくなる老父がひとり暮らすアパルトマン、父と別れた母が暮らす家など、パリに生きる人々の住宅の様子を垣間見ることができる作品。「フランス人の家には本が多くて、インテリアの一部になっているのも面白い」とフランス映画に詳しい小柳帝さん。父親の介護、自らの難しい恋愛関係の中でもがき、生きていく主人公の等身大の日々が描かれる。監督のミア・ハンセン゠ラブの実体験がドラマ化された作品だそう。主人公にレア・セドゥ、恋人役はメルヴィル・プポー。2022年製作。photo: aflo

夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっ ...[続きを読む]

『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子

SHARE

『クウネル』NO.128掲載

フランス人の素敵なルール

  • 発売日 : 2024年7月20日
  • 価格 : 1000円 (税込)

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)