【映画好きの3本】アーティスト・持田香織さんおすすめの渋い俳優の演技が光る3本とは?
その名もズバリ、各界の映画好き著名人がそれぞれの視点でおすすめの映画3本を紹介する「映画好きの3本」。今回はアーティストの持田香織さんのおすすめをご紹介します。
大衆的ないい映画を、渋い俳優の演技で見るのが好きです。
「我が家では家族で映画をよく観ました。テレビの洋画劇場やビデオでです。週末、外食に出かけてその帰りに1本は父の観たい映画、1本は姉のおすすめのビデオを借りてきて4人で観賞。そんな時間が好きでした」
幼い頃の団欒の記憶は、今も持田香織さんの嗜好に関わっているようです。
「クリエイティブな視点で映画から何かをもらうというより、映画で心がほぐれたり、感動できて多くの人と共感できるのが嬉しいんです。身構えることなくラフに入っていけるような……」
心地よさや幸福感を多くの人に伝えるアーティストならではの、自然なチョイスではないでしょうか。
「いい映画で、しかも好きな人が出る映画なんて普通すぎるかもですが、特に初老の名優に感情移入してしまいます」
挙げてくれた1本目『マイ・インターン』のロバート・デ・ニーロ演じる主人公は、リタイアした後も社会貢献をしたいという意志が強く、アン・ハサウェイら若い世代の会社に飛び込みます。
「溶け込んで役に立とうと努める、真摯さにシンプルに打たれました。正直に生きている人たちを描いて教訓臭くなく、淡々としつつもドラマティックに話は進みます。スーツをびしっと着て、ビジネスバッグに愛用品を詰めて会社に出かけるデ・ニーロさんの実直な姿には、勤め人だった父の面影を重ねているのかも?!」
『ジョー・ブラックをよろしく』も、アンソニー・ホプキンスの父親像に心を動かされて。
「映画的な設定や意外性が詰まっていて見事に終結する、いい映画です。死神の恋の話? いやいや、厳しくも暖かい父親、ホプキンスさんの家族への愛の物語だと私は思っています。しみじみします。デ・ニーロさんもですが、生きてきた時間が顔に刻まれているような人たちは素敵!」
タイプとしては異なりながら、『ザ・ロック』も持田さんにとってはいい映画、面白い映画として同じ並びです。 「軍人たちが国を脅迫してFBIが……という設定は荒唐無稽で、娯楽作に違いないけれど、カーアクションやスタント、ロケーション、ウィットに富んだダイアログ……全てがプロフェッショナルな力とお金をかけ尽くされた映画という点も感服します。ショーン・コネリー、エド・ハリス、さらにまだ中年手前のニコラス・ケイジ。私にとっては理想のフォーメーションでした」
ショーン・コネリーは既出の2本の映画に共通し「父性」をにじませつつも百戦錬磨のスパイを全うし、エド・ハリスは角度違いの熟した渋みも発散します。
「ハリスさん、国家に歯向かわざるをえない背景を、存在感で表せるのが凄い。観る側はすっと納得できます。コネリーさんも安心感のもてるスパイ。かっこいいですね。映画の醍醐味は説得力をもつ俳優たちに異空間に連れて行ってもらうこと、そんなことを改めて思います」
PROFILE
持田香織/もちだ・かおり
東京都出身。デビュー27周年めを迎えるEvery Little Thingのヴォーカルで現在はソロでも活動中。ジュエリーデザインやイラストも手掛け、料理、旅、陶芸、着物など多彩な趣味を持つ。kaorimochi.co
『クウネル』2024年5月号掲載 写真/須藤敬一、取材・文/原 千香子
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