パリに暮らして5年目になる〈クウネル・サロン〉メンバーの松永さん。日本とのカルチャーの違いをいろいろと感じていますが、そのひとつが、雨降りの日の行動にあるそうです。
パリへ来るよりもずっと前から「フランス人は傘をささない」という話を、幾度となく耳にしてきました。雨が降り出すと人々が一斉に傘を開く日本文化で育った私は「いや、そんなはずないだろう」と思っていましたが、パリへ来てみたら、確かに!雨が降っても傘をささない人がたくさんいたのです。
ぽつりぽつりと雨が降り出した時に、ぱっと傘を開く人はとても少ないように思います。こんなとき、あまりに人々の反応がないので「あれ?雨が見えているのは私だけ?」と思うほど。さらに降ってくると、少しずつ「雨宿りする」→「スカーフを頭からかぶる」→「フードをかぶる」、最後に「傘をさす」という順番で様子が変わってきますが、それでも「傘をささない」という人が必ず、結構な数で存在します。
みんな雨が降っていても、まるで降っていないかのごとく(当然びしょ濡れで)平然と歩いている…とても不思議な光景ですが、これにはパリのお天気事情が関わっているかもしれません。
パリはとてもお天気が変わりやすく、季節の変わり目ともなると、1時間の間に何度も晴れと雨を繰り返します。公式の天気予報でさえ、毎時でお天気マークが変わるくらい、雲の動きが予想できません。実際に、急に降り出しても少し待てば大抵止むため、いちいち傘を持ち歩いたり、そのたびに開閉を繰り返すくらいなら「雨を防げればいいか」「ちょっとくらい濡れてもいいや」という感覚になるのも分かる気がします(ずぶ濡れは理解しがたいですが……)。そしてここはフランス。大量の水をかぶろうが、ホネがばきばきに折れた古い傘だろうが、紙袋をかぶろうが、人は人、他人の目は気にしないのです。
私はもともと外出時に傘を忘れることが多く、日本では「大人なのに恥ずかしい……」と思いながら雨の中を小走りしていましたが、今は上着のフードや巻き物が大活躍。それがなくても「まあいいか」と、多少の雨なら濡れても焦らなくなったので、気楽という意味ではこの文化に賛成です。
但し、雨がまだ止んでいないのにさっさと傘を閉じてしまうフランス人が多いことは、また別のお話。結局みんな、傘が嫌いなのかも…?