「持続可能な」を意味する「サステイナブル」。言葉はよく耳にしますが、サステイナブルな暮らしとはどういうものなのでしょう?
昨年末に発売された、翻訳家の服部雄一郎さん、麻子さん夫妻による著書『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方』(アノニマ・スタジオ刊)は、暮らしを変えることの楽しさを教えてくれる一冊。すぐに始められるサステイナブルな工夫や考え方など、自分ができることやそのヒントが見つかります。
服部雄一郎・麻子/はっとりゆういちろう・あさこ
夫・服部雄一郎、妻・服部麻子。アメリカ、南インド、京都を経て、2014年に高知県に移住。長男(高1)、長女(小5)、次男(小2)の5人家族。
雄一郎:神奈川県葉山町役場のごみ担当職員として、ゼロウェイスト政策に携わる。訳書に『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ)、『プラスチック・フリー生活』(NHK 出版)、『ギフトエコノミー』(青土社)など。
麻子:野草茶のブレンドを手掛ける。
一家の環境に配慮した「ゼロウェイスト」や「プラスチックフリー(プラフリー)」の実践的な取り組み、循環や持続可能性を意識した暮らし方がメディアで紹介され、注目を集めている。今後はゲストハウスなども運営予定。
ホームページ:http://sustainably.jp/
Instagram : @sustainably.jp、@lotusgranola
■サステイナブルは「せめぎ合い」
既に持っているプラスチック用品。「処分したほうがいいのでしょうか? まだ使えるのに捨てるのはもったいない気がします……」という質問をよく受けます。 確かにもったいないです。僕も、何年も前に購入してしまったプラスチック製の衣装ケース一式を、「今さら捨てるわけにもいかないし……」とそのまま使い続けていました。
でも、このあたりのことはつくづくバランスだと思うのです。「もったいない」という現実と、「使い続けることのストレス」。さらに、プラスチックの種類によっては、そのまま使い続けることで「健康リスクや環境汚染を増大させてしまいそうなもの」もあります。
そういう意味では、「いかにもったいないとしても」、今回限り処分してしまい、「新たな自分に生まれ変わってスッキリ暮らす」というのもひとつです。わが家は、引っ越しを機に、 その衣装ケースをすべて知人に引き取ってもらうことができました。でも、いつもそんな風にうまくいくとは限りません。
つくづく正解のない選択です。人の数だけ正解があって、むしろ、「何を選ぶか」にその人らしさが表れる。人生も同じ。答えのない様々な選択の連続です。
「より良い消費」を意識しはじめると、同じように難しい選択を迫られることはよくあります。「過剰包装のエシカル商品 vs 簡易包装の通常品」「遠方のオーガニック野菜 vs 近場の普通の野菜」「地元企業の普通の商品 vs 大企業のエコ商品」などなど。
どちらがいいのか、はっきりとした答えがほしいところですが、たとえ高度な計量経済学をもってしても、たぶん「本当の答え」は出ません。アメリカの大学院で環境政策を勉強してみて、そのことは痛感しました。本当の環境負荷をどう数値化するかはあまりに複雑で、「何を前提にするか」で真逆の結果が出ることもしばしば。 何を選んでも正しくない気がしてしまう……かもしれませんが、そうしたジレンマは「配慮できる自分」に前進できている証しでもあります。
あとはその中でどう自分らしい選択をするか? そして、さらに前進を続けて、どのようなアクションにつなげていけるか? 決めるのは自分です。
「やっぱり違った」と思ったらどんどん修正していけばいい。「今日正しいと思ったこと」が「明日も正しい」とは限りません。間違いが判明することは、より正しい方向への一歩。
ひとりひとりが、自分なりに考えて、選ぶ。その積み重ねによって、現実はきっと良い方向に進んでいきます。遠回りのように思えるかもしれないけれど、それは「ひとつの正解」 という脆い幻想にみんなが盲目的に従うよりも、よほど真実味があって、パワフルに未来を動かしていくように思います。
※本記事は『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方』(アノニマ・スタジオ刊)からの抜粋です。
撮影 衛藤キヨコ
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サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方
- 高知の山のふもとに暮らす、翻訳者・服部雄一郎とその家族の無理なく楽しむ、シンプルで心地よい暮らし。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』訳者が、持続可能な暮らしのノウハウや生き方を綴る。ゴミ、プラスチック問題に精通しているからこそ、無理なく楽しく取り組む方法やアイデアが満載。それぞれの暮らしに合ったヒントが見つかる一冊。
- 『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方』