おこもりの力強いパートナーといえば読書ですね。言葉のプロである〈クウネル・サロン〉メンバーの甘糟りり子さんに、一年以内に読んだ本で、特に心を動かされたタイトルを伺いました。
挙げてくださったのは山田詠美さんの『つみびと』(中央公論社)と、レティシア コロンバニの『三つ編み』(早川書房)。どちらも2019年の夏ごろに発売され、特に女性たちの間で話題になった本です。
『つみびと』のモチーフは、2010年に起きた大阪二児置き去り死事件。育児放棄した母親が抱えていた過酷な状況や、彼女を取り巻く人たちの問題など、貧困や不幸の連鎖を丹念に紡ぎます。
「育児放棄は決して許されることではないけれど、罪を犯した人だけが負うものではないなと、本書を読み、母親の背景を思うことで感じました。山田詠美さんの大ファンですけれど、これまでとは違った山田詠美さんを読むことができました」
『三つ編み』は違った場所で、理不尽な人生と戦う3人の女性を描いたフランスの小説。状況が全く異なる3人の人生が交互に語られ、最後には「髪」という象徴により結びつきます。「偏見や古い価値観に向き合い、それに争うように生きる女性たちに心を動かされます。近年起こっている#Me Too運動の物語だと思います」
チョ・ナムジュさん作の『82年生まれ、キム・ジョン』(筑摩書房)も、女性が感じた理不尽や困難に対して綴った物語で、この2冊とともに甘糟さんが感銘を受けた本です。