【作家・甘糟りり子さん 今だから読みたい3冊】築90年の日本家屋で、心落ち着く読書時間。

甘糟りりこ

本好きさんの愛情と思い入れが詰まっているのが本棚。作家でありクウネル・サロンのプレミアムメンバーでもある甘糟りり子さんの本棚とは?

甘糟りりこ

仕事部屋の書棚。 上には向田邦子さんゆかりの小さな猫の置物と山田詠美さんからの菓子箱の猫。「敬愛する作家にあやかりたくて飾っています」

甘糟さんの仕事部屋でひと際目を引くのは、斜めの仕切りが特徴的な本棚。「元々は本棚ではなかったと思いますが、あまりにも多くの本が家の至る所にあるので、置き方で少しでも変化をつけられたら」と、 地元の古道具屋〈そうすけ〉で購入したそう。築年を超す日本家屋に、趣のある中古家具がなじみます。

甘糟りりこ

部屋中の壁に書棚を設えた書庫には、哲学書やフランス文学、趣味のワグナーに関する本など、父の遺した本が収蔵されている。また、’70年代から続く貴重な雑誌の創刊号なども充実。山からの風が抜ける、静かで心地いい空間。

「この狭い書庫にいるととても落ち着くし、読書や書くことにも集中できるんです。だからここをもっと活用しようと、読んでみたい父の本を残しつ つ、整理している最中です。父とはもっと本の話をしたかったなあと今にな って後悔しています。そんなことを思いながら、父の遺した本をめくったり、 小説の構想を練ったり、書庫で過ごす時間を楽しんでいます」

甘糟さんお気に入りの3冊。

『第二の性 女はこうしてつくられる』 ボーヴォワール 訳/生島遼
『第二の性 女はこうしてつくられる』
ボーヴォワール 訳/生島遼一

「ボーヴォワールの新刊『離れがたき二人』を読んだら、高校時代に背伸びして読んでも理解できなかった、この本を読み直したくなって。初版本の装丁も気に入っています」新潮社
『ボリス・ヴィアン全集 10 墓に唾をかけろ』
『ボリス・ヴィアン全集 10 墓に唾をかけろ』
ボリス・ヴィアン 訳/伊東守男
「初めて読んだ20代では黒人差別の問題を他人事のように捉えていたのですが、映画『サマー・オブ・ソウル』を観てから読み直したら本当に悲しい話だと改めて感じて」早川書房
人新世の「資本論」
『人新世の「資本論」』
斎藤幸平
「経済成長を止めないと地球は壊れるという主張。極論ですが、そうかもしれないと。この30年の二酸化炭素の排出量が今までの歴史上で排出された総量の半分を占めると知り、自分たちの行動を猛省しました」集英社¥1,122
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『ku:nel』2022年1月号掲載

写真 横山泰介/取材・文 黒澤弥生/再編集 久保田千晴

●その他、読書に関するトピックいろいろ。

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甘糟りり子

1964年生まれ。幼少より草花に囲まれた鎌倉の家に暮らす。『産まなくても、産めなくても』、『産む、産まない、産めない』(ともに講談社文庫)など、出産にまつわる物語が多くの女性の支持を得ている。『鎌倉の家』(河出書房新社)や『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)などでは、鎌倉での暮らしの魅力と愛情を綴っている。その他著書として『バブル、盆に返らず』(光文社)も。
Instagram:@ririkong

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