「私が好きなのは一度読んだら完結する本じゃない。常に思索欲を挑発してくれるような本なんだと思います」。そう語る文筆家・漫画家のヤマザキマリさん。現在の活躍の原点ともいえる本を紹介いただきます。
ヤマザキマリ
東京造形大学客員教授。’84年に渡伊。2010年、『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第1 4回手塚治虫文化賞短編賞受賞。著書に『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』など。
『昆虫の図鑑』
小学館の学習百科図鑑
4歳の頃に母親にねだって買ってもらったというこの本。テープで補修された当時のそのままのボロボロの図鑑からは、数えきれないほど何度もページをめくった様子が窺えます。昆虫の多様性や、意思の疎通のできない生き物と共生する面白さも子供心に感じていたそう。「人間や物事を観察する視点も、この図鑑のおかげで育まれたと思います」。図鑑の裏表紙には当時、ヤマザキさんが書いた名前が。
『百年の孤独』
G.ガルシア=マルケス 訳/鼓 直
こちらも図鑑と等しく〝観察本〟。「人間は、倫理や教育や知性で縛らなければこういうことが起きるという視点が、過酷で残酷な部分も含めて面白いし、笑えました。人間の実態性がよく描かれていると思います。『テルマエ・ロマエ』で、日本人にとっては見慣れたシャンプーハットにローマ人が驚くシーンとか、普段、当たり前にあると思っているものを、デフォルトにしてみる視点もマルケスの影響だと思います」
『 祖国地球 人類はどこへ向かうのか』
エドガール・モラン 訳/菊地昌実
「夫に勧められました。人間にとっての教養と見聞の必然性を自覚できる大切な一冊。著者は100歳で現役のフランスの哲学者・社会学者。音楽からアニメ、映画、文学、歴史まで網羅したような内容で、ドキッとする言葉に、気づかされるものがたくさんありました」
写真 玉井俊行 / ヘア&メイク 田光一恵 / 取材・文 矢沢美香
河田実紀 Hata-Raku / 再編集 久保田千晴
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