本来は食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食材の削減に関心が高まる中、世界的なデザイナー、ジョルジオ・アルマーニがプロデュースする東京・銀座のファインダイニング『アルマーニ / リストランテ』に、そのような“フードロス食材”を取り入れたコースメニューが登場しました。実は、世界中の『アルマーニ / リストランテ』に先駆けた、画期的な取り組みなのです。
ご覧ください。愛らしいルックスだと思いませんか? こちらは『アルマーニ / リストランテ』がこの春から提供しているコースメニュー「LOSS FOOD MENU」の1皿目。ビーツを練り込んだビスコッティ生地の上にはヴィーガンマヨネーズが絞り出され、そこに上品な甘さと爽やかな香りが特徴の柑橘類“湘南ゴールド”と、春の山菜である“うるい”がトッピングされています。
このアミューズに取り入れられている湘南ゴールドは、いわゆる“フードロス食材”。
食料廃棄問題に取り組む「FOOD LOSS BANK」の協力のもと、食品自体に問題はないものの、形が不揃いだったり、見た目が悪くなったりして、市場で販売できずに行き場を失っていたものを調達しているそうです。
ビーツのビスコッティも、フードロスの削減に対するシェフたちの挑戦の一貫。厨房で余った切れ端などを処分せず、ビスコッティを赤紫に色付けするために活用しているのだとか。そのクリエイティビティが溢れる仕上がりには、普段の『アルマーニ / リストランテ』の料理と比べて遜色が感じられません。
今回のプロジェクトを指揮した『アルマーニ / リストランテ』のカルミネ・アマランテシェフは、こう話します。
「コロナ禍を経験し、もともと関心があったフードロス削減を突き詰めてみたいと思いました。しかし、実際に仕入れて調理してみると、さまざまな壁にぶつかりました。例えば形が不揃いな食材は、調理に技術とセンスを要する。個体差があるので、火入れの時間ひとつとっても調整しなければならないのです」
また、料理人として新たな気づきもあったようです。
「料理においては、味覚はもちろんのこと、視覚も重要です。不揃いな食材に対してどのようにアプローチするか。それは今回のコースメニューを考案するうえで最大の課題でしたが、そのおかげで食材と真っ向から向き合い、その生かし方に心を砕くことができたように思います。それはワクワクするような楽しい時間でした」
話を聞いているうちにふと興味が湧き、ナポリ出身のアマランテシェフにイタリアのフードロス事情を訊ねてみると、「イタリアではフードロスはほぼありえない」という答えが返ってきました。日本ではパック売りの風習があるため、形のいびつなものがはじかれがちですが、イタリアでは量り売りが一般的であり、料理で余ったらジャムにしたり、ジュースにしたりと活用する習慣が身についているそうです。
アマランテシェフは言葉を続けます。
「イタリアで働いていたときから考えていました。料理とは、料理人のメッセージが織り込まれたものであり、自分もそのようにしてしっかりとメッセージを発信していきたい、と。形が不揃いな食材も、アイデアひとつで美しい料理になる。そのことをお客様が『アルマーニ / リストランテ』の料理を通じて感じ、また、未来の暮らしかたに想いを馳せていただけたら何よりです」
『アルマーニ / リストランテ』のLOSS FOOD MENUのようなコースメニューを選ぶことは、フードロス削減への貢献や生産者の応援に繋がります。環境問題に向き合うというとハードルが高く感じられるかもしれませんが、これならばお腹や心まで満たされて、おいしく楽しく取り組むことができます。なお、店内のテーブルはゆったりと配置されており、パーテーションも設けられているので、安心して食事することができます。ぜひ、チェックしてみてください。
アルマーニ/リストランテ
住:東京都中央区銀座5-5-4 アルマーニ / 銀座タワー 10階&11階
電:03-6274-7005
営:Lunch 11:30-15:00(L.O.14:00) Dinner 18:00-23:00(L.O.20:30)
※現在、営業時間が変則的なので直接レストランにお問い合わせください
https://www.armani.com/restaurant/jp/restaurant/armani-ristorante-ginza/
文/甘利美緒