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【モノとコトをつなぐ由布院温泉の旅①蛟龍窯】日常の名品、軽くて丈夫な焼き物の産地を訪ねて。

由布院

“おんせん県”というニックネームどおり、数々の名湯を抱える大分県。とりわけ全国的にも名高い温泉地・由布院を訪ねました。温泉以外にも、美しく使いやすい器の産地でもあることをご存知ですか?

由布院
由布院
雄大な由布岳と丘陵帯。山間には川が流れ、自然豊かな由布院盆地を形成。夜が冷え込んだ日の翌朝には霧が立ちこめる幻想的な“朝霧の里”。
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この由布院に魅了され、移り住んで終のすみかとされる方も多くいるのだとか。 大分市出身で約15年前に由布院へ移住し、由布岳の麓に工房を構える陶芸家の林裕司さんも、その一人です。

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「由布院は、歴史を振り返ってみても分かるんですが、常に外から入ってきたものを受け入れる土地柄なんですよね。人も、文化も、器もみな。そんな懐深い由布の人たちとの出会いがきっかけで、僕自身、導かれるようにこの地にやってきました」

林さんの『蛟龍窯(こうりゅうがま)』は、天草や信楽の土に、白や黒の御影石を混ぜて作陶するのが特徴の一つ。どっしりと見えますが、実は軽くて丈夫。「材料には特にこだわっているわけではないんです。それよりも、土と石、それぞれの表情をどう出すか、配分を考えながら作ることが大事で。季節や天候、湿度によって土は変わりますから、日々実験のような感覚でもあるんですよね」

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独立した初期の頃から作り続けているのが、アラジンの魔法のランプのような形をした、その名も“アラジンポット”。「フランスのモン・サン=ミッシェルへ行った時に、由布岳のイメージと重なり、作りはじめました。今もマイナーチェンジしながら作っています」
由布院 2
“しのぎ”という模様をつけている花器。普通は直線で描くものを、林さんは流線形にアレンジして由布院の水や波紋をイメージしているそうです。右の花器は四角いハンドルがユニーク。手前のカップは面取りのデザイン。ソーサーには手に持った時に滑らないよう、両面に櫛目の模様が。デザインと機能性を兼ね備えています。
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熊本の小代焼で修業していた時に一番好きだった「青小代」からヒントを得た湯呑み。こんこんと湧く由布院の水のイメージも表しています。
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林さんの作品には、ハンドル(取っ手)のついたものが多く見られます。「僕の作品は普段使いできることが基本。これは、僕が修業してきた熊本の小代焼や、 高校時代、兄に連れられ感銘を受けた日田の小鹿田焼 、 福岡の小石原焼のような“民衆のための器”という価値観からも影響を受けています。毎日使ってもらいたいから重たいのはダメ。そして、使う人の手に馴染むものでなくちゃならない。ハンドルは、持ちやすさの象徴的なデザインでもあるし、“つながる”というシンボリックな意味も込めているんです」

湯布院
荒めの黒御影石と土を混ぜ、釉薬のかけ方で表情をつけたマグ。

実際にハンドルに指をかけてみると、逆にハンドルが指を握り返してくるような感覚が。「人それぞれ、しっくりとくる感触って微妙に違うんです。あるだけ試してみてください」。
気がつけば自分の指にしっくりくるものは2つほどに絞られ、見た目だけでは探し出せない、自分だけの器に出会うことができました。

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白御影石の表情が朴訥とした雰囲気。
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大きいハンドルが付けられた湯呑み。
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由布院のおいしいアップルパイを想って作ったリンゴ型ポット(左)と、ぽてっとした取っ手が可愛らしい急須。どのポット類も水切れが良い。
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由布院の湧水と温泉を使ったスリップウェアなども作っています。
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机に打ちつけながら捏ねた石土をろくろに置き、器づくりに向き合う林さん。風が止んだかのように、ろくろの回る音だけが静けさの中に響きます。「懐の深い由布院という土地がそうであるように、僕が作る器も型にはまらず自由に受け入れながら作っていきたいんです。そして、使う人にとって実用性があって、温かい器であってほしい、という願いを込めて作陶しています」

工房兼ギャラリーの蛟龍窯では、器の購入ができるほか、陶芸体験も可能。気さくなお人柄の林さんが丁寧に指導してくれます。要予約。

由布院 2
工房にはギャラリースペースがあり、購入することも可能。

写真・文 神保亜紀子

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