【山崎まどかさん✕柚木麻子さん対談Vol.1】映画・ドラマで際立つかっこいい大人の女たち

山崎まどかさん✕柚木麻子さん対談──映画・ドラマのかっこいい女たち

数多くの作品を通して、魅力的な大人の女性に出会ってきたおふたり。個性豊かな登場人物たちから、いま憧れるかっこいい大人像を探ります。

PROFILE

山崎まどかさん

山崎まどか/やまさき・まどか

「失敗してもチャーミングな人が好き」
コラムニスト・翻訳家。映画や文学、海外カルチャーなどのテーマで執筆。主な著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)ほか。映画評や書評も手がける。

柚木麻子さん

柚木麻子/ゆずき・あさこ

「何歳になっても、面白いことをしたい!」
作家。2010年デビュー。『ランチのアッコちゃん』(双葉社)、『BUTTER』(河出書房新社)などベストセラーを次々に執筆。映画をはじめカルチャーへの造詣も深い。

完璧じゃなくてもいい。失敗できる大人に憧れる

山崎まどかさん
山崎さん

年齢を重ねたら、自然と憧れていた大人の女性に近づいていくものだと思っていました。いざ自分がその年齢になってみると、「あれ? ジャンヌ・モローみたいになっているはずだったのに、全然違う」って。もちろん、バッチリ決めている女性には今でも憧れます。でも最近は、多少隙があったり、大人になっても失敗できる人に惹かれます。失敗したときに「大人なのに、こんなこともできない……」と嘆くのではなくて、「まだ伸びしろがあった」と思える。そういう人が、今の私にとってはかっこいい女性ですね。例えば、『恋愛適齢期』のダイアン・キートン演じるエリカが、まさにそうで。

柚木麻子さん
柚木さん

みんな大好きナンシー・メイヤーズ監督の作品ですね。

『恋愛適齢期』

『恋愛適齢期』ダイアン・キートン演じるエリカ・バリー

ダイアン・キートン演じるエリカ・バリー
離婚後ひとりで生きてきた50代の劇作家エリカと、若い女性とばかり付き合ってきた独身男性ハリー。思いがけず惹かれ合うふたりを通して、大人の恋と人生の変化を描く。
写真:AFLO

山崎まどかさん
山崎さん

エリカは自分のスタイルを持っているけれど気取っていないし、大人になっても新しく恋をして、泣いたり、取り乱したりもするけれど、それが最高にチャーミングなんですよね。

柚木麻子さん
柚木さん

素敵なおうちに住んでいる。

山崎まどかさん
山崎さん

そして、1951年の名作『アフリカの女王』のローズ(演:キャサリン・ヘプバーン)もそう。第一次世界大戦下のアフリカで、船乗りのチャーリーと出会い、彼の船でドイツ軍の砲艦を沈めようと言い出す。危険な川を下りながら困難に立ち向かう、正義感が強くて意志のある女性です。でも、チャーリーと喧嘩をすれば傷つくし、腹を立てて彼が大事に飲んでいたジンを全部川に捨てちゃうの。強いけれど、どこか子どもっぽくもある。今観ても魅力的だなと思います。

『アフリカの女王』

『アフリカの女王』 キャサリン・ヘプバーン演じるローズ・セイヤー

キャサリン・ヘプバーン演じるローズ・セイヤー
第一次世界大戦下のアフリカ。兄を亡くしたイギリス人の宣教師ローズは、船長チャーリーの小さな蒸気船に乗り込み、ドイツ軍への反撃を決意。ふたりの無謀な冒険が始まる。

今も心惹かれる、あの頃の“いい女”たち

柚木麻子さん
柚木さん

私は子どもの頃から、とにかくテレビばかり観ていたんです。映画の教養は、ほとんど洋画劇場で培われたようなもの。同時に、そこで素敵な大人の女性像も形づくられていったんですよね。かっこいいと思っていた女性って、だいたい銃を持っている(笑)。

山崎まどかさん
山崎さん

いいスーツを着てたりね。

柚木麻子さん
柚木さん

そう! 昔から特に、キャスリーン・ターナーが大好きなんです。彼女が主役の『私がウォシャウスキー』もそうでした。私立探偵で、いわゆる“いい女”なんだけど、結構ずっこけているんですよね。失敗もするし、ボロボロにもなる。でも、そこがかっこよかった。

『私がウォシャウスキー』

『私がウォシャウスキー』キャスリーン・ターナー演じるV・I・ウォシャウスキー

キャスリーン・ターナー演じるV・I・ウォシャウスキー
シカゴで活躍するタフな私立探偵ウォシャウスキー。ある男性の殺人事件をきっかけに、その娘とともに不審な事件の裏に潜む謎を追っていくハードボイルド・ミステリー。
写真:PictureLux/アフロ

山崎まどかさん
山崎さん

『女神の見えざる手』のエリザベス(演:ジェシカ・チャステイン)は、かつて男性が演じてきたようなアウトロー的な人物を、女性が演じている面白さがあります。すごく腕の立つロビイストで、銃規制の実現しか考えていない。勝つためには手段を選ばなくて、冷静なんだけど、よくよく考えるとやっていることは全部むちゃくちゃだったりするの。

『女神の見えざる手』

『女神の見えざる手』ジェシカ・チャステイン演じるエリザベス・スローン

ジェシカ・チャステイン演じるエリザベス・スローン
政界を舞台に、敏腕ロビイストのエリザベス・スローンが銃規制法案をめぐる熾烈な戦いに挑む。勝つためなら手段を選ばない仕事人の彼女の姿を描く、社会派サスペンス。
写真:Everett Collection/アフロ

柚木麻子さん
柚木さん

『ミンボーの女』の宮本信子さん演じる井上まひるも、私の中では“いい女”そのもの。ヤクザに脅されているホテルを助ける弁護士で、完全に西部劇のヒーローのような役なんですが、初登場のシーンでは鼻に栓をしてプールにいる(笑)。ものすごく仕事ができて、正義の味方なのに、いちいちおかしいの!

山崎まどかさん
山崎さん

いい女なのに、いちいち決まりきらないところがいいんですよね。

『ミンボーの女』

宮本信子演じる井上まひる
ヤクザにつけ込まれたホテルが、民事介入暴力専門の弁護士・井上まひるに助けを求める。法律と知恵を武器に、脅しに屈することなく立ち向かう姿を痛快に描く伊丹十三監督作。
写真提供:伊丹プロダクション

柚木麻子さん
柚木さん

それから『ホーム・アローン』も、大人になってから観ると印象が変わりました。子どもの頃はケビンに感情移入していたけれど、今は母親のケイトに。ケビンを家に置いてきたことに気づくと、飛行機が取れなくても、あらゆる手を尽くして息子のもとへ戻ろうとする。その姿が、今観るとすごくかっこいいなって。それに、ケイトのファッションも好き。上質なセーターを着て、髪をきれいに巻いて、口紅をちゃんと塗っている。そういう姿にも、ずっと大人の女性を感じていたんだと思います。

『ホーム・アローン』

『ホーム・アローン』キャサリン・オハラ演じるケイト・マカリスター

キャサリン・オハラ演じるケイト・マカリスター
クリスマス旅行に出かけた家族に置き去りにされ、ひとり家に残された少年ケビン。家を狙う泥棒2人組を相手に、奇想天外な仕掛けを駆使して大奮闘するドタバタコメディ。
写真:Collection Christophel/アフロ

山崎まどかさん
山崎さん

日本のドラマなら、配信がスタートして、最近また話題になっている『すいか』の浅丘ルリ子さん演じる教授も素敵でしたよね。大学教授なのに下宿屋で暮らしていて、自由で、全然気取ってなくて、偉そうじゃない。

柚木麻子さん
柚木さん

それでいて、いつもしっかりお化粧をして、おしゃれで。昔憧れた大人の女性らしい華やかさもちゃんとありますよね。

『すいか』

浅丘ルリ子演じる崎谷夏子
2003年放送のテレビドラマ。信用金庫に勤める基子が、下宿「ハピネス三茶」で暮らし始め、個性豊かな住人たちと出会う。それぞれの悩みや孤独をユーモラスに描く。

山崎まどかさん
山崎さん

若い頃から日活の大スターだった浅丘さんが、年齢を重ねてあの役を演じているのもまたいいんですよね。昔の作品には、どこか「こういう女性が美しい」「こういう女性がミステリアスだ」という型があったと思うんです。でも今は、女性を描く視点そのものが変わってきている。理想の女性像を見せるだけじゃなく、その人のリアルな部分や、かっこよさの裏側まで描く作品が増えた。「こういうのもかっこいいんだ」と思える女性像が広がってきた気がします。

『クウネル』2026年11月号掲載
写真/川村恵理、イラスト/五月女ケイ子、取材・文/阿部里歩、編集/鈴木麻子

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『クウネル』NO.141掲載

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