繰り返し読んだ安井かずみさんの本は付箋だらけ。藤原美智子さんが存在の美しさに影響を受けた人生の先輩【素敵な大人たち】

安井かずみ

揺るぎない信念、洗練の美意識、孤高の精神、慈しみの心……自分のスタイルを持つ素敵な大人たち。人生の先輩や、生き方のお手本など、各界で活躍する方々のそれぞれの視点から憧れの人をうかがいます。今回は、藤原美智子さんが人生の指南役にしている作詞家でエッセイストの安井かずみさんについて。

語ってくれた人

藤原美智子

藤原美智子/ふじわら・みちこ

ビューティ・ライフスタイルデザイナー

1958年秋田県生まれ。92年ヘア&メイク事務所「LA DONNA」設立、美容業界を牽引。2022年ヘア&メイクアップアーティストに終止符を打ち、食や装い、暮らしなど美しい生き方を提案する道へ。

大人の女性として存在の美しさを感じる、私の灯台。

1939年、第二次世界大戦が起こり、先行きの見えない不安と緊張感が社会を覆いはじめたころ、神奈川県横浜市で誕生した安井かずみさん。後に日本を代表する作詞家として活躍し、55年の短い生涯を濃く強く、そして自由に生き抜いた女性です。「知らないうちに、これほどまでに自分が影響を受けていたとは思っていませんでした」と、藤原美智子さんは言います。

「憧れという言葉はしっくりこない。では、人生の先輩として指南役として、私にとって灯台のような存在は誰だろう?そう思いながらふと自宅の本棚を見ました。すると安井かずみさんの著書が何冊もあって……。約30年前、私がヘア&メイクアップアーティストの事務所を立ち上げ、『大人としてちゃんとしなくちゃ』と思い、読んでいた本でした。

当時、それまでの日本にはいないような、手に職を持ち、自立したかっこいい大人の女性として活躍されていた安井さん。著書の中で『これだ!』と思う言葉が書かれたページには付箋を貼り、30年経った今もそのまま、付箋だらけです。読み返してみると「え、この言葉って安井さんの言葉だったのね!?」と、自分で考えて発していたと思っていたフレーズが、じつは安井さんだったことに気づき驚いています。それだけ影響を受け、シンパシーを感じていたんでしょうね」

安井かずみ

1965年、伊東ゆかりの『おしゃべりな真珠』で第7回日本レコード大賞作詞賞を受賞した26歳のころ。当時、日本一若い作詞家として脚光を浴びる。たばこをくゆらす姿もかっこよく、その生き方にも注目が集まる。
©マガジンハウス

安井かずみ やすい・かずみ 作詞家・エッセイスト
1939年横浜生まれ。フェリス女学院卒業後、文化学院油絵科へ。20歳で偶然手掛けた訳詞がきっかけで作詞を始め、生涯で約4000曲を作詞。パリやN.Y.で暮らし時代の先端を行くおしゃれとセンスで憧れの存在に。30代で加藤和彦と結婚。若い世代を中心にワーキング・カップルとして注目される。1994年55歳の若さで逝去。

女性は男性よりも一歩引くべきである、女性は家庭を守るものである、という当時の社会通念に反し、研ぎ澄まされた感性を生かし存分に仕事をする、抜群のファッションセンスで装う、スポーツカーを颯爽と乗りこなす、大恋愛結婚をし、互いを尊重しながら素敵な暮らしを楽しむ。そんな新しく自由な生き方を貫いた安井さん。藤原さんが惹かれた理由は?

「おじさんと呼ばれるような男性たちが席巻していた昭和の古い音楽業界に、安井さんは26歳の若さで作詞家として頭角を現し、ジュリーの『危険なふたり』や、郷ひろみの『よろしく哀愁』など次々ヒット曲を生み出した女性です。それも髪を振り乱して仕事一辺倒ではなく、おしゃれも、恋愛も、暮らし方も雰迎。大人の女性としての存在の美しさと凛々しさを感じたんです」

安井さんの著書のあらゆるフレーズに共感

さらに、藤原さんが大切にしている安井さんの著書『贅沢に、美しく大人の女』(大和出版)に記された言葉のチョイスが曰く「“安井かずみ”している」と。

「『大人とは、愛することができる女のことを言う』『結婚するとは、愛の覚悟である』『お金は漫然と使うものではない』『新旧のバランスのよい人が一番新しい』『無口はルール違反、喋りすぎはマナー違反』……生き方、結婚、経済、コミュニケーション、あらゆる側面のフレーズに力を感じるし、共感します。

やはり安井さんは私にとっての灯台ですね。自分がどちらに進めばいいかわからないとき、あっちでもない、こっちでもないというよりも『私はこういう感じが好きだわ、じゃあこっちへ行こう』という灯台があれば、生きていくのも楽になる。安井さんのような人が好きということは、自分の中にも同じようなものを幾らかでも持っているからだと思うんですよね。だから時には、この灯台は違ったかもと思うことがあったとしても、方向性は大きくはズレてはいないと思うの。それを信じることも大事かなと」

大人の女性として安井さんを尊敬する藤原さんに、大人とは何かをうかがいました。

「自分に責任を持っている人、人のせいにしない人。50歳を過ぎて不平不満そうな顔をしている女性をたまに見かけます。それは人のせいにして生きているからかなって。不平や不満は大人の女性をきれいに見せないと、人の振り見て我が振り直すようにしています。安井さん然り、女性ならではの潔さや、自分らしさを大事にして、きちんと生きている人。それが私が思う、大人として成熟している女性だと思っています」

『クウネル』2026年11月号掲載
取材・文/河田実紀

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