安田成美さんの微笑ましい母娘関係。木梨家の共同作業、そして60代に目指すものとは。

安田成美さん

変わらぬ笑顔とスタイル。そして年齢を感じさせないハリのある声と凛とした佇まい。同性ながら見惚れてしまう、俳優の安田成美さん。10代、20代は俳優、歌手として忙しい日々を送り、28歳でとんねるずの木梨憲武さんと結婚。母となってからは、子育てを優先しながらの俳優業でした。3人の子供はいずれも成人し、子育てに終わりが見えた今、新たなる活動に意欲を注いでいます。

ライフワークとも言える朗読劇とは

ーー演技に歌にナレーションにと多彩な安田さんですが、最近のお仕事はどのようなものが多いのでしょうか?

「そうですね、子育てが終わったこともあり、自分の時間がいっぱい持てるようになったので、何ができるか?と自分に問いかけ『何がやりたい? 何が好きか?』を考えた結果、好きなことだけを選び、やっていこうと動きはじめました。今年は朗読劇とライブがおもな活動です」

――そのひとつが、4度目の公演となる朗読劇『星の王子さま』ですね。

「もともとサン=テグジュペリの『星の王子さま』が好きで読んでいたのですが、朗読劇をやろうと思ったきっかけは、作曲家・阿部海太郎さんの音楽との出合いなんです。海太郎さんとは出演した舞台の音楽を手掛けられていたことで知り合い、私が何かを差し上げた際のお礼にと、ご自分がセレクトされた音楽を編集したCDをいただいたんですね。それを家で聞き始めたら、気づいたら家事をする時も編み物をする時も流すようになり『海太郎さんにお会いしたい、よし会おう』となりました。

海太郎さんと一緒に何かをやりたいと思い始めたなかでライブを聴きに行ったら『星の王子さま』にぴったりでは?  海太郎さんが作ってくれる音楽なら絶対に大丈夫と確信に変わり、海太郎さんの音楽ありきでこの朗読劇が動き始めたんです」

ーー『星の王子さま』は、砂漠に不時着した飛行士と、とある星から地球にやってきた小さな王子さまとの出会い、そしてふたりやその他の登場人物との会話から、さまざまな教えを受け取れる世界中で愛されるベストセラーです。

「『星の王子さま』と聞くと子供が読むストーリーとも思われがちですよね。でもこの朗読劇は、私が書き起こした本から台本を作ったのですが、王子さまが地球に降り立ったところから始まり、自分の星を思う、自分の星にある薔薇を思うところに焦点を置いたストーリーに仕上げているので、ある意味女の人に響くものがあるかな?と思うんです。子供というより”子供の純粋さ”を持って人を愛する、そしてものを愛するというところが、海太郎さんの音楽とも共鳴すると私は思っています」

安田成美さん

ライブ活動再開のきっかけは娘からの言葉

ーー秋に予定されているのが、丸の内のCOTTON CLUBで開催するバースデー・ライブ『YASUDA NARUMI 60th』ですね。

「2024年に久しぶりに音楽活動を再開し、昨年はワンマンライヴも開催しました。キーは昔と変わらず出るんですが、出ると言っても何か不安げで。だから秋に備えてボイストレーニングに励んでいます。やはり自分では思いつかない喉や声帯の広げ方から教えていただけるので、自分でも『あー、こんな声が出るんだ』と驚き、この年になると教えてもらうこと自体が少ないからとても新鮮です。もちろん教えていただいたことは家で練習しています」

「実はこのライブでは私が詩を作り、娘のなつ子が曲を書いてくれた『わたしはわたし』という曲も披露する予定です。ライブに備え、何か新しい曲を作りたいねと話している時になかなかうまく進まなくて『やっぱりダメかな』と頓挫しそうになっていたところ、それを聞いていた娘が『私が作ろうかな』と言い出し『じゃあ作って』と」

「2、3日後に『曲ができたよ』と言われ、本当に驚きました。しかもその曲が妙に大人っぽいんですよ(笑)。彼女はちょうど今23歳なので、20代ぐらいの心の突っ張りぐあいというか、そんなシーンが曲に合うかなと思い、詩を載せてみました」

昨年、久しぶりにライブのオファーが来た際も『私には無理、お断りしよう』とぐずぐずしていたら、娘に『自分のためにやって』と言われて目の前が開けたんです。誰かを押し除けて勝ち得た仕事でもないし、ライブをやったことで何かが変わるかもしれない。そうか、自分のためねと思い切ってトライしたんです」

安田成美さん

木梨家の共同作業が自然な形で始まりました

ーー今年は娘さん、息子さんたちとの共同作業が生まれたと聞きましたが。

「そうなんです。あえて狙ったわけではないのですが自然の流れで。娘が作曲した経緯もお話しした感じでしたし、次男の銀士は『星の王子さま』のオープニング映像を制作してくれたんです。一昨年の初めての朗読劇の際に長男と次男が会場や駐車場の整理を手伝ってくれたんですが、次男がトイレの場所がわかりにくいのでは? と、その場でイラストを描いた紙をペタペタ貼ってくれたんです。それをたまたま海太郎さんが見て気に入り、彼のポートフォリオを見てくださったんです。

「そこから『銀士くんも一緒にやりましょう』と声をかけてくださって、オープニングの際に海太郎さんの音楽にあわせて映像を動かすアートを制作したんです。『星の王子さま』のストーリー性から、海太郎さんから『太古の時代、細胞が生まれるとか、原子が誕生するイメージを音楽で作りたいから映像を作ってほしい』となかなか難しいオファーがあったらしく。でも出来上がった映像と音楽が会場に世界観を作ってくれて『星の王子さま』というストーリーを朗読し始めるのに、私はとても助かっているんです」

ーーお子さんたちとコラボレーションできるなんて素敵ですね。

「ありがたいですね。子供と何かやるなんて考えたこともなかったんですが、気づいたらこんな素敵な形で一緒にできて本当にありがたいです」

「我が家は小さい頃から子供に対していい意味で責任は持ちたくないし、人間だから何を考えているか読めないし、子育てに正解はありません。だからつねに子供たちには「どうしたい?」「何がほしいの?」と意思を聞くようにしていました。だから学校も3人が全員バラバラのところに通いましたし、上に倣えで同じ学校に行ってくれたら親は楽だったんですけどね(笑)」

「どういう価値観が正解なのかわからない世の中になり、じゃあ生き残るために何が強いかといったら、好きなものを持っていることが強いと思うんです。だから好きなものは何? 好きなものだけ作ろうねと話し、それは大好きな人でもいいし、好きな音楽でもアートでもいいと思っています」

ーーまるで翼が生えたかのように自由を謳歌し、その中から自分の「好きなもの」をチョイスし、輝きを増している印象があります。

「ありがとうございます。実は来年、朗読劇で新しいチャレンジ、宮沢賢治さんの『銀河鉄道の夜』を予定しています。ひとつの舞台の座組を作るのは大変な作業ですが、朗読劇はひとりでできるというところが気楽ですね。私は力も知識もないんですが、朗読だったら自分の好きなストーリーをセリフで演じ、あとは照明と音楽。そして解釈はお客さまに委ねられるていうところが好きでもあるんです」

安田成美さん

自分を大事にして生きる。その秘訣は朝晩のストレッチ

ーー来年還暦を迎えるにあたり、何か自分がイメージしている姿はあるのでしょうか。

「最近生きていることを大事にするようになったというか、自分を大切にするようになりました。だから健康でいたいということぐらいですかね。健康の秘訣は朝起きた時と寝る前に行うストレッチです。最初は無理なく5分から。それを日々続け、今は15分から30分行っています。がんばりすぎずにできるものがストレスなく続く秘訣かな」

「あとはこれやりたい、これが好きと思ったら、動けるものならすぐに動きたい。そうして毎日を充実させ、夜ベッドの中で『今日もがんばりました』と自分を少しだけ褒められるのが理想です」

朗らかで軽やか。だから周りを囲む家族も笑顔で幸せ。そんな多幸感を感じさせる安田成美さん。好きなことを形にしていく充実感を得て、これからもますます輝く姿を、映像で、舞台で、ずっと見ていきたい。

INFORMATION

朗読劇「星の王子さま」

アントワーヌ・ド・サン=テクジュペリ作/内藤濯 訳
構成・朗読:安田成美 作曲・演奏:阿部海太郎 美術:木梨銀士
主催:キナシコッカ
日程:2026年9月9日(水)〜2026年9月10日(木)
開演:19:00(開場18:00)
会場:重要文化財 自由学園明日館 講堂
詳細はこちら:サンライズプロモーション東京

YASUDA NARUMI 60th

【MEMBER】
安田成美(VO)/丈青 [SOIL&“PIMP”SESSIONS](p)/秋田ゴールドマン[SOIL&“PIMP”SESSIONS] (b)/梶内胡良 (ds)/栗原健 (sax)/吉田サトシ (g)

日時:
2026年11月27日(金)
【1st.show】開演18:00(開場17:00)
【2nd.show】開演20:30(開場19:45)
11月28日(土)
【1st.show】開演16:30(開場15:30)
【2nd.show】開演19:30(開場18:30)
会場:コットンクラブ丸の内
詳細はこちら:コットンクラブ

PROFILE

安田成美/やすだ・なるみ
1966年東京都生まれ。1982年にドラマに初出演、映画『風の谷のナウシカ』のイメージソングで歌手デビュー。以来、ドラマに多数出演し、日本アカデミー賞優秀主演女優賞などを受賞。プライベートでは、1994年に木梨憲武さんと結婚し、二男一女の母に。近年は、ドラマ『みをつくし料理帖』、映画『Fukushima 50』『すばらしき世界』などに出演するほか、執筆や朗読劇、音楽など幅広く活動。著書に『星の王子さま 私をつくっている大切なものたち』などがある。

写真/杉田裕一、ロケーション協力/kudan house、取材・文/今井 恵 

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