新発想の収納。掃除でも、片付けでも、物を減らすでもない「その先」、収納そのものをうつくしく

広瀬裕子の家の棚

ミニマムなワードローブ、2年間にわたるシルバーヘアへの移行など、好きなものと年齢に合わせた生き方へとシフトしているの広瀬裕子さん。

60代突入という節目に、「やめたこと」「はじめたこと」について綴ります。今回のテーマは、「うつくしい収納」についてです。

「物を収める」収納のその先に

少し時間ができるとクローゼットを俯瞰します。時間がなくても思いついたら物の出し入れをはじめます。仕事が捗らない時も──。何でしょう。わたしは、四六時中、クローゼットに手を入れているようです。

広瀬裕子の家の棚

造りつけの棚に唯一置いているのは何かあった時用の情報を記した「エンディングノート」。

物を減らしはじめたのは、部屋がコンパクトになったのがきっかけというのは何度か書きました。120㎡から45になり、家具その他の物を時に一気に、時に少しずつ、減らしました。

物が減っていくとクローゼットや収納に余白ができます。ある日、クローゼットのなかも部屋のレイアウトを変えるように、余白を生かし、整えたくなりました。「収納=物を入れる」と考えがちですが、収納そのものをうつくしくしてもいいはずです。

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使用していないイスは色のバランスを検討した後クローゼットへ。着物類は畳紙を統一して。使用時の出し入れのしやすさは「余白」があるから。

余白を十分に取るとうつくしい

まず、ぎっしり、ぴったりを見直しました。次に物により、それぞれの余白をつくることにしました。ただ、それをするには、スペースに余裕がないとできません。広い家からコンパクトな部屋に移ったのです。無理がある──。と、なると、あきらめるか、さらに物を減らすか。わたしは迷わず後者を選びました。

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自分用の漆の器は1箇所にまとめて。

次に、収納のための収納グッズは買わないと決めました。「ここにこれを入れたい」ために、便利な収納グッズを取り入れることが時としてあります。でも、収納グッズの多くは、やはり、収納のためのもので、うつくしい物はそう多くありません。それに、結果、収納グッズという物が増えてしまいます。賃貸のこの部屋の元々の造りとあるものだけを使うことにしました。

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日常に使用する食器は色とメーカーを統一してすっきりした印象に。

よかったのは、収納が多く、棚板が自由に動かせる仕様だったこと、クローゼットに奥行きがあったことです。布団も入り、ある日、クローゼットにイスが入ることに気づいた時は「発見」とこころ躍りました。

うつくしさや調和を重視して物を配置

クローゼットレイアウトのポイントは、なかの物がきれいに見えること。扉をあけた時うれしくなること。ざっくりしたカテゴリー分け。

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3シーズン・黒白グレーを基本にクローゼットに入るだけの枚数に。収納は色別に。

これ。やはりはじめると楽しいのです。掃除ではないですし、片づけでもない、物を捨てるという行為でもない。この色の横はこれ。同じ色彩でまとめよう。この形の物の余白はこのくらい。これもここに入るのでは?   そんな風にパズルを仕上げるようにひとつひとつ物というピースを置いていきます。置いた後は少し離れた場所に移動し見え方を確認する。1度扉を閉め開けた時の気持ちを確かめる。そうしていくと、最後に思い描いていた絵が浮かび上がります。

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フラワーベースも1箇所にまとめて。

部屋もきれいになり、何がどこに入っているか把握でき、出し入れしやすくなる。いいことばかりです。特にわたしは自宅で仕事をしているので、部屋や収納が、気持ちに与える影響の大きさに今更ながら驚いています。視界が広くクリアになりました。クローゼットレイアウトに気づいて本当によかった。空間と暮らしの質が上がりました。

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キッチンスの作業ペースを広くとるため電気ケトルを移動。同色のイスと揃え目立たないように。

不便なこととしては、色数を絞っているので、必要な物を見つけるのに時間がかかることでしょうか。でも、それさえ、見つけた時は「わあ」となり、Amazonのボタンを勝ち誇ったような気持ちで押します。

仕事が捗らない日でも、クローゼットに向き合っているとさぼっている感じがしません。それもちょっとうれしいです。

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広瀬裕子

執筆のかたわら、50歳から空間設計の仕事をはじめ、現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどのディレクション、フードアドバイス等にも携わる。著書に60歳からあたらしい私(扶桑社)など多数。
Instagram:@yukohirose19

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