漫画家・紫門ふみさんが大切にする言葉。降りかかる問題を乗り越えたいとき思い浮かぶ中也の詩の一節

人生のどこかで、ふとしたきっかけで出合った忘れられない言葉。勇気を与えてくれたり、心を軽くしてくれたりそれぞれの人が心に留めている大事な言葉を教えていただきました。
紫門ふみさんが大切にしている言葉。

中原中也の「春日狂想」という詩の一節なのですが、子供を失った絶望を、淡々と日常を送ることでやり過ごす境地が描かれています。
悲しみの中のユーモア、リズムの良さに惹かれて高校時代はすべての詩を暗唱するほど中原中也が好きでした。その頃は絶望するようなことはありませんでしたが、大人になるといろんなことが降って湧いてくる。さあどうやって乗り越えようという時に、ふっとこの言葉が浮かんできます。
気持ちが乱れた時も、規則正しく日常を重ねていけば少しずつ立ち直ることができる。うれしい時もはしゃぎすぎるといらぬ期待をしてしまうので極力感情をフラットに。年齢を重ねてより一層、昨日と同じように日常を送ることが大切だと思うようになりました。
PROFILE
紫門ふみ/さいもん・ふみ
漫画家 68歳
『東京ラブストーリー』『同・級・生』など数々の名作で知られる漫画家。近著に『いつも犬が居た』(KADOKAWA LifeDesign)。6月から『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で新連載がスタート。
『クウネル』2025年7月号掲載 写真/木寺紀雄、取材・文/吾妻枝里子
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