映画好きの3本/役者、演出・脚本家 の高泉淳子さん「終の棲家に移るときDVDをトランクに忍ばせたい」3本
その名もズバリ、各界の映画好き著名人がそれぞれの視点でおすすめの映画3本を紹介する「映画好きの3本」。今回は役者・演出家・脚本家の高泉淳子さんのおすすめをご紹介します。
年を重ねてからも、傍らにずっと......。 何度でも観ていたい映画を絞りこむ 。
「子どもの頃、テレビの映画劇場をよく観てました。いつも横で父が解説してくれ、兄と一緒に。いつの間にか通好みの 映画の楽しみ方が身に付いちゃって(笑)。 西部劇、アメリカ映画、フランス映画、 黒澤映画、寅さん、社長シリーズ......。 ジャンル問わず映画が好きになりました。小学5年生の冬に父が倒れ......。前日の月曜ロードショーが父と観た最後の映画に。父が大好きだったリチャード・ウィドマーク主演の『地獄の戦場』でした。映画があれば独りでも寂しくない。父が残してくれたメッセージです」
高泉淳子さんは、さまざまな思いをこめ「終の棲家に移るときトランクにDVDを忍ばせたい映画」をテーマに、人生 の悔やみ事など吹き飛ばしてくれる3本を選出。
1_『用心棒』
「お正月の帰省時に兄と一緒に必ず観るのが『用心棒』。観る度に楽しめる痛快時代劇。筋書き、役者、映画の面白さ、すべてが詰まっている娯楽映画です。三船×仲代コンビを違う形で楽しめる『天国と地獄』を続けて観るのがおすすめ」
2_『明日に向かって撃て』
『明日に向って撃て!』を観たのは映画 館にひとりで行くようになっていた中学 2年の頃。衝撃はずっと色褪せず......。
「ラストシーンは傑作。キャサリン・ロス演じる女性とブッチとサンダンスの三 角関係にも惹かれました。同じアメリカ ンニューシネマでも『俺たちに明日はない』とは違い、銀行強盗でも未来を夢見ている。かっこいいアウトローのお話で バート・バカラックの音楽がまた素敵。 このポール・ニューマンとロバート・レッドフォードを見て、映画に役者に憧れ るようになりました。映画をやりたい!と思いましたが、小劇場ブームの渦中に 入り舞台の方へ行き......。映画のような 演劇を作りたいと思うようになりました」
今も少女の頃のままに映画に傾ける熱い気持ちが、ひしひし伝わります。「映画音楽は映像を観ながら思いを巡らす余白を与えてくれるので大好きです。
3本は音楽も最高。映画には台詞のないシーンもあれば音楽が流れているだけのシーンもある。結末や筋があいまいな映 画もある。観る側の解釈は自由で、どこまでも想像できる映画に魅力を感じます」
3_『ぼくを探しに』
迷いながら最後に落ち着いた1本は少し毛色が違うフランス映画です。
「S・ショメ監督のアニメーションが好きで、初の実写映画!と期待いっぱいで観ました。どこか欠落している人物に強烈に惹かれるんです。この映画はそんな人しか出てこない(笑)。話が交錯していきます。でもその変則的な記憶のページ のめくられ方にはまって、想像逞しくで きる大人の寓話。やさしく心地よくて音楽も抜群!」
映画とは何か、にも思いは巡って。 「この映画は記憶がテーマになっていますが、私は映画こそが記憶なのではと思 います。恋するものの形は時を経れば変わっていくもの。願いを込めて自分で形を変えているのかも。大切な記憶も包み 込んで映画は胸の中で育っていて、記憶 として焼き付いているのでは......」
PROFILE
高泉淳子/たかいずみ・あつこ
役者 演出家 脚本家
1983年、早稲田大学時代の仲間と 劇団結成。少年少女から老人まで演 じる役者として注目される。解散後、 音楽、演劇等の舞台企画、演出で活 躍。12月に恒例『僕のフレンチ』公演を予定。
㉄サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
『クウネル』2024年11月号掲載 写真/須藤敬一、取材・文/原 千香子
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