和食好きの順子さんは、帰国すると必ずお蕎麦屋さんへ。落ち着いた老舗で昔ながらの定番メニューを食べるのも、スタイリッシュな空間でワインとともに楽しむのも素敵。今回は東京の行きつけのお店を紹介していただきます。
好きな食べ物はいろいろあるけれど、蕎麦はそのうちの一つ。どうしてかというと、さっぱりしていて、つるつるっと気持ちのいい喉ごしで食べられるから。東京にいるときに必ず足を運ぶお蕎麦屋さんは、オフィス近くの「室町 砂場 赤坂店」。幼い頃に、大好きな祖母がよく日本橋室町の砂場に連れて行ってくれたの。だから昔から砂場の蕎麦が好き。ここはお昼に来ることが多くて、夜の場合は早い時間に来ます。小瓶のビールから始まって、定番の名物浅利しぐれ煮、玉子焼きやねぎ焼き、あと天ぷらも。小海老と小柱の入ったかき揚げは欠かせません。最後にもり蕎麦を。蕎麦つゆに少しだけ蕎麦湯を足し、山葵を入れて好みの味にしてからいただきます。ああ、美味しい。冬になると温かいものが恋しいので、順子スペシャルで三つ葉蕎麦を作ってもらいます。温かいおつゆと硬めに茹でてもらった蕎麦の上に、三つ葉を蕎麦が隠れるくらいたくさんのせて。それをふうふう吹きながら食べると、身体の芯から温まって幸せな気持ちになります。
それから六本木の「HONMURA AN」にもよく行きます。老舗の砂場とはまた違って、ここはモダンな内装で、お蕎麦屋さんだけどレストランみたいなの。一品料理の種類がたくさんあって、ワインがとても美味しいんです。最後はもちろん蕎麦で締めます。
パリは硬水だからか、残念ながら美味しいお蕎麦屋さんがありません。なので、フランスにいるときは蕎麦は家で食べます。パリのビオの店ではつなぎの少ない蕎麦の乾麺を扱っていて、それが美味しいの。家で食べるときは大概、お昼に何にもないから蕎麦でも茹でる?という感じ。そういうときはあまり材料が揃っていなくても、おかずはやっぱり天ぷらに。残り物の野菜や戻したわかめとか、そのときにあるものを揚げます。薬味は庭から採ってきた山椒の実や大葉。ねぎの代わりに刻んだエシャロットも、蕎麦つゆにたっぷりと入れていただきます。
行きつけの店、その1/室町 砂場 赤坂店
昭和39年創業の老舗。風情ある店構えとこぢんまりした店内は、幅広い客層で常ににぎわっている。順子さんはビールをお供に絶品のもり蕎麦を。天もり(一番粉)¥1,550や天ざる(さらしな粉)¥1,600も人気メニュー。
住:東京都港区赤坂6-3-5
電: 03-3583-7670
営:11:00~19:30LO(土〜19:00)
休:日曜・祝日
行きつけの店、その2/HONMURA AN
六本木のHONMURA ANは場所柄、外国人客も多く、蕎麦のほかに単品メニューも充実している。ワインがあることも順子さんがお気に入りの理由で、ディナーで訪れてゆっくり食事を楽しむことが多い。
住:東京都港区六本木7-14-18
電:03-5772-6657
営:12:00~14:30、17:30~22:00LO(土日祝~21:30)
休:月曜、第1・3火曜
しまだじゅんこ
千葉県館山生まれ。1981年JUNKOSHIMADA DESIGN STUDIO を設立。今春でパリコレクション参加が76回目に。『島田順子おしゃれライフスタイル』(マガジンハウス)など著書多数。
『ku:nel』2019年11月号掲載
写真 渡辺謙太郎 MOUSTACHE / 取材・文 綿貫あかね / 編集 黒澤弥生