【本が教えてくれた憧れの人の生き方】編集・PRの森祐子さんが抱きしめてきた茨木のり子さんの言葉

書籍『茨木のり子の家』

若き日に心を震わせられた詩の一節。大人になってより深まった書き手の心情への共感。本を通じた敬愛すべき女性との出会いは心の宝物です。6人の女性たちに、それぞれの先達への思いを聞きました。

森祐子が抱きしめてきた、茨木のり子の言葉

書籍『茨木のり子の家』
茨木のり子の家』詩/茨木のり子
2010年に出版。知人から紹介されて手にしたという森さん、「木村裕治さんの装丁が美し い」。茨木さんが生前に用意した自身の葬儀の際の挨拶状文面が鮮烈。1,980円(平凡社)

祐子さんが茨木のり子さんの詩に出合ったのは10代の少女のころ。茨木さんの代表作『自分の感受性くらい』の一節を日記帳に書き写していたのだとか。「乾いた心に水やりを怠ったのは自分、〈自分の感受性くらい自分で守れ〉という言葉に惹かれたんだと思います。いろいろ困難なことがあっても人のせいにしないでいたい、人に押しつけそうになっても、そうはしないという気持ちは、そのころから今でもずっと持ち続けています。茨木さんの言葉は押しつけがましくなく、清廉で、ふくよかで、美しいです」

茨木のり子さん
茨木のり子 1926年~2006年。戦後を代表する詩人。 『見えない配達夫』『自分の感受性くらい』『倚りかからず』『歳月』『詩のこころを読む』など。谷川俊太郎さん撮影の写真は本書より。

茨木さんが50年間暮らした家や暮らしを、詩や随筆、自筆原稿とともに紹介した本書も愛読書の中の大切な1冊。東京郊外の木造二階家のおちついたたたずまい、おおらかながら吟味された家具や調度に惹きつけられます。「茨木さんが写っているわけではないのに、人と暮らしが感じられます。壁に飾られたスプーンや生活工芸など、それぞれに物語がありそう」と森さん。よいつくりの家と、花器や燭台、布や器。キンモクセイが窓辺に薫る、豊かな庭木。夫への思いを綴り収めた箱。

「華美に飾り立てず、誰のためでもなく好きなように生きている。詩の印象のまま、自立した女性のいた家、という感じだけれど、硬く閉じた雰囲気がなくて、手紙や原稿の字のようにやわらかさを感じます。自分も自分らしい暮らしをつくっていこう、ちゃんと自分を生きよう、と思えるのです」

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/久々江満(本)、取材・文/石毛幸子、丸山貴未子

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