『アートフロントギャラリー』前田礼さんの憧れ。凛として美しい、茨木のり子の詩。

谷川俊太郎選 茨木のり子詩集

詩集としては異例のベストセラーとなった『倚りかからず』をはじめ、時代をこえて多くの人々の胸を打つ茨木のり子さんの言葉の数々。『アートフロントギャラリー』の前田礼さんも、そんな彼女の言葉と生き方の美しさに憧れる女性のひとり。今回は前田さんおすすめの茨木のり子詩集を、美しい詩とともにご紹介します。

茨木のり子

1926〜2006年。大阪府出身。代表作に『自分の感受性くらい』『倚りかからず』など。50歳からハングルを学び習得、翻訳詩集『韓国現代詩選』を刊行した。『茨木のり子の家』、『茨木のり子の献立帖』などもある。

『茨木のり子詩集』谷川俊太郎選

どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終りには一杯の黒麦酒
鍬を立てかけ 籠を置き
男も女も大きなジョッキをかたむける
(中略)
どこかに美しい人と人との力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となってたちあらわれる
ー「六月」より

お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ
ー「みずうみ」より

茨木のり子 詩集
現代詩人の結社「櫂」で、茨木さんと同人だ った谷川俊太郎さんが選び、2014年に刊行された詩集。『見えない配達夫』『自分の感受性くらい』『歳月』など代表的な作品が読める。「新型コロナで家から出られなかったとき、『わたしが一番きれいだったとき』や『六月』 を思い出しました。戦争とは違うけれど、卒業式とか、高校野球とか、美しい季節を奪われた子どもや若い人の気持ちと通じるところがあると感じます」。(岩波文庫 700円)

『茨木のり子詩集』

あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
ー「汲むーY ・ Y にー」よ り

茨木のり子 詩集2 岩波文庫
1969年に発行されて半世紀以上、読み継がれる作品集。そのなかの 「汲むーY・Yにー」は、前田さんの心に常にある大切な1篇。また同書所収の長詩「りゅうりぇんれんの物語」は詩人の歴史観、戦争加害者としての自分を見つめた、「社会的なものをきちんと考え続けた茨木さんだからこその作品です」。(思潮社 1,165円)

『詩のこころを読む』

茨木のり子 詩のこころを読む
こちらも今から約40年前に書かれたロングセラー。ジュニア向けだが、大人にとってもとても楽しい詩の入門書だ。「生まれて」から「別れ」まで、人の一生をたどる章立ての中で、さまざまな詩人の詩が、茨木さんの優しい語り口で紹介されている。「こんな詩を人生の友達として持ちたいものです」。(岩波ジュニア新書 900円)

『自分の感受性くらい』などの詩で、多くの女性の共感を得てきた茨木のり子さんに、前田礼さんはずっと敬愛の気持ちを抱いています。「すべてのいい仕事の核には震える弱いアンテナが隠されている」。茨木のり子さんの詩「汲む」に書かれたこの言葉に特に励まされ、「いくつになっても、そういう気持ちを持って仕事をしたいし、生きていきたい、とずっと思ってきました」。

前田さんにとっては、生きる道筋を照らしてくれる灯りのような言葉なのです。「日常をすくいとる、平易な言葉を使っているけれど、凛として美しいので す。戦中を生きた世代として、平和のことや日本の戦争責任についても考え、それを詩にうたわれている姿勢にも憧れます」。
死後に発表され、夫への愛情を素直に綴った詩集『歳月』も、女性としての茨木さんの生の感情があふれていて、圧倒的な美しさだという。

『ku:nel』2020年9月号掲載

取材・文/原 千香子、青木純子

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