ストーリー性のある独特の世界観、長く大切に着続けたくなる丁寧なものづくりで多くのファンを魅了する人気ブランド『ミュベール』。
シーズンごとのテーマを心ときめく洋服や小物に落とし込み、お洒落の楽しさを届けてくれるデザイナーの中山路子さんに、ご自身のときめきアイテムを伺いました。
心ときめく映画から着想を得た秋冬コレクション
『ミュベール』の特徴のひとつが、シーズンテーマから着想を得たオリジナルプリントや繊細な刺繍です。2022秋冬のテーマは、1975年に公開された映画『グレイ・ガーデンズ』。
『グレイ・ガーデンズ』は、アメリカの上流階級に生まれながら、窮屈な世界で生きることを拒み、荒廃した郊外の別荘で気ままにくらす母娘の姿を綴ったドキュメンタリー映画。「既成概念や、社会的地位を気にすることなく本能のまま、自由な暮らしやお洒落を楽しむ姿からインスピレーションをいただきました。生まれ持った気品があるのでどんなスタイルもおしゃれ。きれいにまとめるのではなく、柄・色・素材、好きなものをコラージュするような、自由で楽しいおしゃれを表現しています(中山さん)」
アメリカンヴィンテージを表現したワンピース&コート
秋冬コレクションから中山さんがオーダーしたのは、鮮やかなフラワープリントのワンピースと、フラワーモチーフが施されたロングコート。
「ワンピースはヴィンテージ感を表現したかったので、洗いざらしたような凹凸のある生地に、70年代のアメリカをイメージしたコントラストの強い花柄をプリントしています。ウール素材に、サテンの花、スパンコール、刺繍を施したコートも、異素材の組み合わせや素材感でヴィンテージのような風合いを出しました(中山さん)」
心がふっとゆるむようなポップなモチーフバッグ
「アニマルモチーフのバッグや小物も毎シーズン出しているのですが、特にワニモチーフがお気に入り。大事にしているものをここぞというシーンで愛用しています。服もバッグも、見せるためのものではなく、身につけることで自分自身がワクワクしたり、持つだけで心がふっとゆるむような、愛らしいものに心惹かれます(中山)」
好きなものに心が浮き立つ、子供の頃の純粋な感覚を大切に
「ミュベールの洋服は、今のトレンドからは少し外れるかもしれませんが、世の中の物差しに合わせるのではなく、それぞれの個性を表現していただけるツールのひとつにしていただきたいなと思っています。子供の時、好きなものに出会った時の無意識に心が浮き立つような気持ちを、洋服に袖を通していただいた瞬間に感じていただけたら。
ワンシーズンだけでなく5年後も10年後も、セルフヴィンテージとして育てていただけるようなお洋服やアクセサリーを作りたい。心ときめくものを大切に、その時々の自分らしく、おばあちゃんになるまでファッションを楽しんでいきたいと思っています(中山さん)」
取材・文/吾妻枝里子