料理家の中川たまさんの新しい住まいは、神奈川県逗子市内で 五度の引っ越しをして見つけた一軒家。少しずつ、自分と家族になじむ場所へとなりました。
中川たま/なかがわたま
料理家
料理教室を主宰するほか雑誌や書籍などでレシピを提案。器使いやもの 選びなどセンスのある暮らしぶりにも ファンが多い。『ふわふわカステラの 本』(主婦と生活社)など著書多数。 Instagram:tamanakagawa
「イチから作るより、そこにあるものの中でどうするかを考える方が好き」
生まれは兵庫県尼崎市。阪神大震災のあと結婚を機に上京した中川たまさん。娘の幼稚園入園の際、神奈川県逗子市に移り住んだのは20年弱前のこと。いまのように都心から移住する人も少なく、最初のころはホームシックになり、都内の友達のところにしょっちゅう遊びに行っていたと笑います。そんな中川さんは、なんと現在の住まいを合わせて市内で5回もの引っ越しを重ねています。
「定期借家だったり住み替えが必要だったり、その時その時で事情があったのですが、私も家族も引っ越しが多いことにはあまり苦がなくて、むしろワクワクする気持ちのほうが大きかったように思います」。いまの住まいは築32年の一軒家。今年で三度目の冬を迎えます。
光がたっぷりと差し込むリビングダイニングには、アンティークのテーブルや椅子、器を収納している棚などが点在していて、ギャラリーや器屋さんのようなインテリアが印象的。家具はほとんどが前の家から使っていたものだそう。
「専門学校でコーディネーターを専攻していたこともあり、イチから作るより、そこにあるものの中でどうするかを考える方が好きなんです。この前に住んでいた家はキッチンがすごく狭かったんですが、どう使いこなすかを考えるのが楽しかったですね」
現在の住まいは、いよいよどこかに根を下ろそうと購入するつもりで探したという家だそう。娘は大学生になったため学区はもう気にしなくていいからと 県内の他のエリアも見たけれど、いまひとつしっくりこなかったといいます。
「日ごろの食材の買いものなどを考えると、やっぱり昔から見知っているこのエリアがいいなと思い、この家を見つけて決めました」
床の張り替えやキッチンのリフォームを経て転居。庭には夫手製の広いウッドデッキがあり、たっぷりの日差しのもとで植物が青々と茂っています。「料理に使える果樹やハーブを植えて少しずつ手を入れています。ゆくゆくは小屋を作りたいと思っています」
『クウネル』2022年1月号掲載
写真/砂原 文、取材・文/結城歩