静岡・沼津で暮らしの道具の店「hal(ハル)」を営む後藤由紀子さん。
50代ならではの装い、台所の工夫、人付き合いのコツなど、暮らしにまつわるさまざまなことを紹介した著書を多数出版しています。
日々の生活から生まれるアイデアや気づきは素直で等身大。多くのファンの心をつかんでいます。
そんな後藤さんの暮らしのエッセイをお届けします。
■きっかけは30代のときの大病。いつ何があるか分からないと実感しました。
息子が4歳、娘は2歳。私は32のときでした。
突然、いままで味わったことがないほどの頭痛に襲われて病院へ。髄膜炎でした。
髄液を抜いたら脳圧が下がり、事なきを得ましたが、1か月ほど入院。健康でいること、当たり前の日々のありがたさを実感したものです。
私は自他ともに認める「すぐやる課」なのですが、この大病がきっかけな気がします。
予定は先延ばしにしない。できることはすぐにやる。明日が来るとは限らないと実感したのです。
それからしばらくして始めたのが「エンディングノート」です。
■市販のノートを利用。手紙の欄は泣きながら書きました。
「もしも今日、私が死んでしまったら、この家はどうなるんだろう」
大病をしたあと、そう思ったことをよく覚えています。
義母が心臓の病気で急逝した際、義父が悲しむ間もなく手続きなどで大変な思いをしたのを間近で見たことも大きかったと思います。
そんなわけで書き始めたエンディングノート。私が使っているのは黄色い表紙の「コクヨ」のもの。
項目が分かれていて記入するスタイルなので書きやすく、メモ欄が多いところも気に入っています。
主な内容は店の請求関連や支払先について、銀行のことや保険関連など。さらには親しい友人の名前や連絡先なども。
家族や友人への手紙を書く欄もあり、号泣しながら書きました。
■備えあれば憂いなし。思い立ったときが始めどきです。
少しずつ書き続け、現在は必要事項や変更事項があれば書き足したり直したりする程度になりました。
実は最近、手がこわばって字を書きづらくなってきたので、早めにやっておいてよかったと思っています。
私の場合はお店のことがあるため、とくに書き残しておくべきと始めましたが、書くことで身の回りのことを見直すよい機会になりました。
興味のある方は、ぜひ、エンディングノート、書いてみてください。
自分のため、家族のため。備えあれば憂いなしですね。