【麻生要一郎さんの、日々のごはん作りのヒントvol.4】家庭の味とは、毎日食べて飽きないもの

麻生要一郎 おにぎり

家庭的で丁寧に作られたお弁当のケータリングが口コミで広がり、雑誌への料理・レシピの提供、食や暮らしについてエッセイなどを執筆するようになったという、料理家の麻生要一郎さん。

日常の食卓を切り取ったレシピと短いエッセイで綴る、2冊目となる著書『僕のいたわり飯』が話題です。心と身体をいたわることができるのは日々の食事。献立の役に立つレシピはもちろん、気持ちを穏やかにしてくれる食卓づくりのヒントが見つかる1冊です。
ここからは料理の楽しさの原点のお話や献立作りのヒントなど、麻生さんに2回に渡ってお話を伺います。


■チャーハンが料理の原点


ーー料理は独学だと聞きました。作り始めたきっかけは?

麻生要一郎さん(以下、麻生):小さい頃、母方の祖母の家が近くて、忙しいときによく預けられていました。祖母は優しく料理上手で、見ていると「これやってごらん」とお手伝いさせてもらったり、買い物についていったり、いろいろしていくうちになんとなく興味が沸きました。

最初に料理をしたのは小学校2、3年生の頃。母が出かけていて遅くなり、お腹が空いたからちょっと料理をしてみようと思い立って、チャーハンを作りました。当時ピーマンが嫌いだったのですが、祖母が作るときはピーマンをすごく小さく切ってくれて、それを再現しようと嫌いなのにピーマンも刻んで。それが自分のために作った最初の料理。達成感、満足感みたいなものを感じて、楽しさの原体験になったんだと思います。その後、火傷をしないようにフライパンを買ってくれたので、料理をする日が増えていきました。

麻生要一郎 近影

ーー料理は独学で学んだそうですが…。

麻生:母は洋風な人で洋食で育てられたから、たまに行くおばあちゃん家の煮っころがしやお惣菜がすごく新鮮に見えました。郷土料理のようなものに全然触れてこなかったし、切り干し大根も家で出てきたことがなかったので、そういう料理に関心がありました。

19歳で父を亡くし、母が会社に出るようになって。母は忙しくても片付けや洗濯はきちんとしていて、踏み込む余地がなかったから、食事なら手伝えるかなと思ってまたごはんを作るようになりました。親子2人で暮らしていて、仕事を終えると一人息子がごはんを作って待っている。一見すると感動的なシーンなのですが、母はそれを受け入れない強さみたいなものがあって。しかも「これおいしくない」って言うのではなく、ひと口食べてすっと箸を置いて「今日はお腹がいっぱいなのよ」と言って、さっと立ち上がるんです。そうすると「今のは好みじゃなかったんだな」と気付いて。レシピ本を見たり改善を重ねて、「あ、今日は食べてくれた!」っていうのが自分の中で喜びになったんだと思います。それが一番修行のようでしたね。

麻生要一郎 花
「食卓に花を飾るのは、母との約束」と麻生さん。

ーー探り探り、日々のごはんを作られていたのですね。

麻生:食べたいものを聞いたところで気を遣って「何でもいいわよ」って言ってくれるんだけど、何でも食べるわけじゃない。だから結構難しくて、例えば牛肉も焼肉とステーキなら食べるけど、炒め物になっているとあまり箸が伸びないんです。それを見ながら、自分でおいしいと思って食べても、出したものを評価するのは相手だということがよくわかりました。結局料理って好みの問題だと思うから、おいしいかどうかは食べてもらわないと判断がつかないんですよね。だから僕のレシピは「参考程度に」くらいの気持ちでいつも出しています。


■家庭の味を大切に

ーーごはんを作る喜びは、その頃に芽生えたのですね。

麻生:そうです。だからと言ってそれを仕事にしようとは全く思っていなかったのが正直なところ。新島で宿を始めてから、趣味だった料理が急に仕事に変わって、最初はすごく緊張したんです。自分は家庭料理しかできないと思っていたけど、あるとき友人に「あなたは家庭の、レストランではない味を大事にしていったほうがいい」と言われたのが自信になり、その言葉を信じて続けていたら、今のようになりました。

麻生要一郎 おにぎり
大きなおにぎりも、麻生さんのごはんの特長だそう。

ーー麻生さんの思う家庭の味とは?

麻生:毎日食べて飽きないこと。例えば飲食店では、おかずはお酒と合わせて満ち足りるような味付けにするのですが、僕はあまり味がしないものが存在していていいのが、家庭の味の魅力だと思っているんです。外食すると、どれもこれもすごくおいしく仕上がっているけど、食べ続けるとすごく疲れてしまうこともありますよね。外食は一品一品を基本に味付けを考えるけど、家庭の味はごはんとおかず、全部食べたときにちょうどいいのが一番いいのかなと思っています。

→インタビューは次回に続きます。

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撮影/山田薫
聞き手/赤木真弓

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