【甘糟りり子さんの鎌倉生活/後編】家と会話をしながら、 アップデートを重ねながら。

甘糟りり子 鎌倉 古民家

築90年以上経つ民家での暮らしには、そこでしか感じられない時間の流れと風情がありました。今までと現在、そして未来を紡ぐ心地いい住まい方とは?前編私なりの色付けで、 受け継ぎ味わいを楽しむ。に引き続き、作家・甘糟りり子さんの鎌倉での生活をお届けいたします。

ダイニングルームと台所の間には引き戸がありま

甘糟りり子 鎌倉 古民家 ダイニング
「来客のとき料理をしながら会話できるので、便利なんですよ」。 窓の外の裏山は春になると見事なシャガの盛りに。

居間に置かれた大きな一枚板のテーブルは東京大空襲を逃れ、縁あって甘糟家に来ました。また、お母様が好きな著名なガラス作家舩木倭帆さんの花瓶はダイニングルームの壁に、 グラスは日常使いをしています。

甘糟りり子 鎌倉 古民家 縁側
「お客様がいらっしゃると風通しがいい、この縁側に案内することも」。春は庭の花々を眺め、夏は夕涼み…。赴きのある和ガラスの戸で囲まれた、四季折々の時間を過ごした場所です。

「どんなものでも使ってこそ。新品が美しさのピークでは残念。時間が経ち、 傷やシミができればそれらをアクセサリーとすればいい。そんなふうに思えるようになったのも、この家に暮らし、 歴史あるものの魅力をわかる年代になったからでしょう」

甘糟りり子 鎌倉 古民家 書斎
見事な合掌造りの書斎。「父が使っていた部屋です。家の中で一番眺めがいいんですよ」。室内には父・章さんの蔵書が多数。現在はリラックススペー スとして使用しているそう。

まるで家と会話をするかのように暮らす甘糟さんは、古い家ならではの楽 しみ方も見つけました。

甘糟りり子 鎌倉 古民家

「ヴィンテージ雑貨は時を刻んでいるからか、どこの国のものでも、うちになじむ。そういうものを取り入れる工夫をしています。こういうアップデ ートが私には大切。職人さんの技術で建てられた家は、手と時間をかけるほどに心地いい空間になっていきます。 両親から受け継いだ家に、これからどんな味付けをしていこう。そう考えるだけでワクワクしますね」

甘糟りり子 鎌倉 古民家
家のいたるところに飾られている生花。
甘糟りり子 鎌倉 古民家
「母の教えで、花は買わずに庭に咲いたものを生けています。四季を感じられる素朴な自然の花が好きですね」
甘糟りり子 鎌倉 古民家
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『ku:nel』2021年7月号掲載

写真/加藤新作、取材・文/河田実紀 Hata-Raku

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この記事の
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甘糟りり子

1964年生まれ。幼少より草花に囲まれた鎌倉の家に暮らす。『産まなくても、産めなくても』、『産む、産まない、産めない』(ともに講談社文庫)など、出産にまつわる物語が多くの女性の支持を得ている。『鎌倉の家』(河出書房新社)や『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)などでは、鎌倉での暮らしの魅力と愛情を綴っている。その他著書として『バブル、盆に返らず』(光文社)も。
Instagram:@ririkong

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