工藝とゆかりの深い山代温泉。伝統工芸と温泉を楽しむ、石川県・加賀の旅② 

石川県・加賀市にある山代温泉は開湯約1300年の歴史を持ち、文人に愛されたことでも知られる温泉。いくつもの名宿が軒を連ねますが、なかでも、「憧れの旅館」として名を馳せる『あらや滔々庵』をご紹介します。北大路魯山人の作品や、歴史的遺産が至る所にあり、そこはまるで美術館や博物館。

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北欧食器のようなモダンな山中漆器が魅力。伝統工芸と温泉を楽しむ、石川県・加賀の旅①

石川県加賀市には、北陸古来の3名湯が点在する”加賀温泉郷”があります。片山津、山中、もうひとつが1300年の歴史をもつ山代温泉。明智光秀をはじめ、与謝野晶子、北大路魯山人といった文化人が訪れたといわれています。二つの総湯(共同浴場)を中心に温泉宿が立ち並び、「湯の曲輪(ゆのがわ)」と呼ばれる、明治時代の街並みを楽しめます。

明治時代の共同浴場を復元した、100%源泉かけ流しの山代温泉の古総湯。洗い場はなく湯船のみ、入湯料は500円。

男女共に一番風呂に入るともらえる、健康、長寿、安産、金運などの願いが叶うというお札。

近くにある、創業100年の老舗和菓子店「しもつね」で購入できる、古総湯のステンドグラスをモチーフにした琥珀糖「やましろ五彩」。

拭き漆の壁や九谷焼のタイル、ステンドグラスなど、中も美しい古総湯。

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古総湯を中心に昔ながらの温泉宿が立ち並ぶなか、芸術家の北大路魯山人と特に縁が深いのが「あらや滔々庵(とうとうあん)」。創業380年、現在は18代の館主が源泉を守る由緒ある旅館です。

山代温泉

まだ北大路魯山人が福田大観と名乗っていた頃に山代温泉に滞在し、陶芸家となるきっかけになったのが、九谷焼の陶工・須田菁華との出会いでした。そんな魯山人の生活を支えていたのが、趣味人でもあった当時のあらや館主。書画や看板などを注文していたこともあり、館内には魯山人ゆかりの作品が並び、まるで美術館のように見応えがあります。

玄関に飾られている「暁烏」の衝立。翼の傷を癒していた烏を見て、1300年に温泉を発見したという山代温泉開湯の伝説にちなみ描いたという。

あらや滔々庵の温泉に入った際に描かれたという、MAYA MAXXの作品。モダンな現代アートと骨董が調和しています。

魯山人の初めての陶芸作品と言われる「赤絵皿」をはじめ、陶芸作品も多数。

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宿泊客のみ利用できる温泉は3つ。地下わずか数十メートルから湧く、全国的にも珍しい山代の湯。自家源泉のお湯は、64度と山代温泉の中でも高めです。あえて暗い照明の中、熱めとぬるめのお湯に交互に浸かることで瞑想できる特別浴室「烏湯」も。

庭の景色が見えるお風呂「瑠璃光」。

イサム・ノグチ、柳宗理などの椅子や照明などを館内、客室にさりげなく配置。

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ゆったりと過ごしてほしいという思いから、35年前、客室を半分以下の17室に。そのうちの10室は源泉掛け流しの温泉つき。どの部屋からも美しい庭の風景、アート作品を楽しめることから、建築やアートに興味のある客が多いのだとか。

魯山人の展示室は、9〜11時まで寛ぐことができる。海外の宿泊客にはお茶を立てることも。

隠れ家のように建つ有栖川山荘は130年前、明治天皇巡行の命を受けて数年がかりで釘1本も使わずに建てられたそう。現在はバーラウンジとして使われています。

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完全個室で楽しめる食事は、地元作家による九谷焼や山中漆器のほか、代々伝わる年代物や魯山人の写しまで、器も見どころ。宿から徒歩数分の場所には、館主自らセレクトした、宿でも使われている器を購入できる店「うつわ蔵」もあります。

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温泉や食はもちろん、工藝やアートへの造詣が深い館主の思いが感じられる、特別な体験ができる宿です。

協力:一般社団法人加賀市観光交流機構

取材・文 赤木真弓

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