食卓を豊かにする道具として、近年注目度が高まっている漆器。工芸品としての佇まいの美しさに加え、軽く、口当たりよく、日常で使いやすいところも人気の秘密です。日常の漆器としておすすめの山中漆器を紹介します。
漆器産地が県内に3つある石川県。金沢から電車で約30分のところに位置する加賀市で、有名な伝統工芸が山中漆器です。山中漆器を作る職人は木地師(きじし)といい、安土桃山時代にいい木材を求めて加賀に移り住んだことから、加賀の山中漆器がスタート。山中温泉を訪れる、湯治客のお土産としても作られてきました。原木をお椀や蓋物、箸などの形に彫り出した、木の素材感を生かした木地挽物(きじひきもの)技術が特徴。石川県指定無形文化財にも登録されています。
そんな伝統的な山中漆器をモダンなデザインで表現したお店、「我戸幹男商店(がとみきおしょうてん)」を訪れました。
明治41年に、山中温泉で「我戸木工所」として創業。自然の木目を生かした高い技術を使った、北欧食器のようなシンプルでモダンなデザインの山中漆器が並びます。
漆器と聞くと、ハレの日に使うようなツヤのあるものを想像しますが、こちらには漆にウレタンを重ね、マットな質感のものも。ツヤがない分、普段使いにも使いやすいのだとか。薄く挽いた木地に黒拭漆はおしゃれで、洋風料理にもよく合います。また漆器は手入れが難しいと思いがちですが、食洗機と電子レンジに入れるのだけNGで、あとは普段通りの手入れで十分だそう。
山中温泉には工房が点在。デンマーク人1人を含めたデザイナーがデザインし、若い人からベテランまで約30人の職人が制作を手がけています。
使い続けるうちにツヤが増すなど、質感が変わっていくのも漆器の魅力。普段の食卓に上品さとおしゃれ感をプラスしてくれる、伝統工芸の漆器を取り入れてみてはいかがでしょうか?
協力:一般社団法人加賀市観光交流機構
取材・文 赤木真弓