コラムニストの中野 翠さんがおすすめ映画を語る本連載。今回は、ロンドン発のストリート・ファッションを生み出した 伝説のデザイナーをめぐる必見のドキュメンタリーです。
中野翠/なかのみどり
コラムニスト。
映画や本、落語などの評論のほか、社会・事件に関する批評を手がける。著書に「まさかの日々」(毎日新聞出版刊)など。
’60〜’70年代のロンドン、その空気感にわくわく
『クウネル』読者だったら必見の映画です。何しろ’60年代後半から’70年代前半にかけての、いわゆる〝スウィンギング・ロンドン〟が時代背景になっているドキュメンタリー映画なのだから。
その時代、ビートルズを筆頭に、ロンドンは若者文化のメッカのようになっていた。ファッションの世界でも同様で、個性を重視したストリート・ファッションが若者たちの間で好まれるようになっていた。
そこに注目したのが、若き日のマリー・クワントと、その夫。ロンドン初の〝ブティック〟を開き、大人ではなく若者たちにターゲットをしぼって、 ミニスカートを売り出して、大ヒット!
マリー・クワント自身がミニスカートを着用、「こういうカッコよさもあるのよね」と示してみせたのも勝因か。
いやはやなんとも。ミニスカート全盛時代は、ちょうど私が二十代に入った頃で、スカート丈は一気に十センチくらい短くなった。
今にして思えば、 「よくまあ、ぶかっこうな脚を平気でさらけ出せたものだ……」と恥ずかしいやら、懐かしいやら。そうそう……ミニスカートの流行によって、パンテ ィ・ストッキングも出回るようになったのよね……。
この映画にも当時の〝ミニの女王〟ツィッギーの出演場面あり。当時、ツィッギーは来日して、いくつかのCM にも出演していたのよね。
映画『ボーイフレンド』(’71年)をわくわくして観たのも懐かしく思い出される。まさにファッショナブルな、 おとぎ話っぽい物語。監督は、何かとお騒がせのケン・ラッセル(もちろんイギリス人)。
そうそう……この映画公開に合わせて、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで『マリー・クワント展』が開催される。これも必見ですね。11月26日から1月29日まで。
マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説
監督/サディ・フロスト 出演/マリー・クワント、ケイト・モス他
Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開中
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https://www.quantmoviejp.com/
※上映時期などは変更の可能性があります。各映画館へお問い合わせください。
文・イラスト/中野 翠 再編集/久保田千晴