【一田憲子さんの好きなもの】仕事よりも大切なものに気づかせてくれた組鍋

有次のアルミ組鍋は、鍋をつかむやっとこもセット

心の支えとなっているもの、暮らしで頼りにしているもの。「愛するもの」についてのストーリーを語っていただきました。

暮らしまわりのものの取材を長年続け、台所道具にも詳しい、編集者の一田憲子さん。愛用しているものと聞き、一番に思いついたのがこの有次のアルミの組鍋だったのだとか。

一田憲子さんのお気に入りの組鍋
特別な手入れはしていないと一田さん。「鍋は使い込んでくすんでいます。凹んでもたたけば戻るところもいいんです」

「詳しいことは忘れてしまったのですが、取材を始めた最初の頃、スタイリストの伊藤まさこさんのご著書を通して知ったのがこの鍋。入れ子になるし便利そうだと思って5つセットで買いました。当時は、6畳の狭いワンルームから古い平屋に引っ越しをして、キッチンが少し広くなった頃。これを買おうと思って、京都に行ったんだと思います。」

「すでに合羽橋で揃えた業務用の鍋を持っていたのに買ったんですよね。アルミなので銅鍋ほど高くはないですが、当時はえいっと心を決めて買った感じです。包丁のように名入れのサービスがあると聞いて、名前も入れてもらいました。今思うと、京都の老舗ブランドという憧れや伊藤さんのお墨付きということだけで決めたのですが、そのうち、すごく使いやすいことがわかってきたんです」

有次のアルミ組鍋は、鍋をつかむやっとこもセット
有次のアルミ組鍋は、鍋をつかむやっとこもセット。大きいものから小さいものまで5つのサイズを一度に揃えた。別売の木蓋も愛用中。
一番大きな鍋は、照宝のせいろを乗せるのにぴったりのサイズ
一番大きな鍋は、照宝のせいろを乗せるのにぴったりのサイズ。「自宅で食事会をしたときは、蒸し物料理をよく作っていました」
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この鍋が活躍するのは、主に日々の夜ごはん作り。2つのコンロの1つには味噌汁、もう1つで煮物を作ったり、 野菜を茹でたり。和食中心だという一田さんは、ほぼ毎日使うそう。

「本当は銅鍋の方がもっといいのかもしれませんが、アルミは薄いので熱伝導が良く、お湯もすぐ沸かせます。コトコト煮て、味を染みこませたい洋風の煮物やカレーはストウブの鍋の方がおいしくできますが、大根の煮物や肉じゃがなど、水分を飛ばしながら煮る和風の煮物は、この鍋が一番おいしくできるんです。洋鍋だと蓄熱効果があるから、大根も柔らかくなりすぎてしまうことも。料理によって、鍋も向き不向きがあるんですよね」

いい仕事をするより毎日のごはんが大事/ 

持ち手がないから場所を取らずに収納ができ、ボウル代わりにも使えて、 使い勝手がいいところがお気に入り。

一番小さな鍋では野菜を茹でる用
一番小さな鍋では、ブロッコリーやさやいんげんなどの野菜を茹でることが多いそう。場所を取らず、ボウル代わりに使えるのも便利。
出汁は大きな鍋で大量に作るそう
出汁を取るのは週に2回。大きな鍋で大量に作るそう。「やっとこが強力なので、たっぷり入っていても、鍋を挟んで持ち上げられるんです」
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「買った当初は、パスタやほうれん草を茹でるくらいしかしてなかったと思います。今はじゃがいもを茹でて、木の蓋を使ってお湯を切り、そのままマ ッシュすることも。持ち手がないと、 野菜を茹でた鍋、お味噌汁、煮物と3つの鍋を使っても、キッチン台に全部乗せることができるんですよね。鍋を挟んで持ち上げるやっとこは、最初は面倒かもしれないけど、慣れれば便利」

「こんなに必要かなと思いますが、ちょうどいいサイズ感というのがあって、5つあると便利ですね。大根を煮るときは重ならないように大きめの鍋 を使い、お肉を使ったボリュームのあるメインのおかずは、2番目、3番目に大きなサイズの鍋を使って2日分くらいの量をたっぷり作り置き。長年かけて、 使い方が決まってきました」

仕事柄、料理家から薦められた鍋を買うことも多いという一田さん。でも、 結局この鍋に戻ってくるそう。

名前入りの一田さんの鍋
すべての鍋には名入り。「包丁に名前を入れてくれるサービスがあると
聞いて、入れてもらいました。より特別なものになりました」

「オーバルの蓋付きの鍋が煮魚にちょうどいいと聞いて買ってみたけど、結局この鍋で作っても一緒。本当はこの5つの鍋さえあれば、これ以上の鍋はいらないんです。ちょうど一人暮らしで、料理をするのが楽しくなった頃に買って、いろいろな鍋を買っては手放し、一番長いお付き合いになりました」

「若い頃は家でごはんを食べるよりも、 いかに外で刺激的な仕事をするかが大事でしたが、いい仕事をすることばかりに照準を合わせていると、歳をとって仕事ができなくなったときに幸せが減ってしまう気がするんです。でも、 おいしいものを食べることの大切さは 変わらない。歳を重ねるうちに、その確かさに価値を置くようになってきました。だからそれを教えてくれたこの鍋が、なおさら大事な存在になってきたんだと思います」

『クウネル』2022年7月号掲載

写真/近藤沙菜、取材・文/赤木真弓

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