主婦歴50年と大ベテランの坂井より子さん。2022年2月に新刊『飾らない。76歳、坂井より子の今を楽しむ生き方』が上梓されました。
坂井さんにとって3冊目となる本書。いままでよりも深く、これまでの人生のことなども綴られています。また、なかには夫やふたりの子どもたちからの言葉もあり、坂井さんの生き方、暮らしぶり、笑顔の秘訣を垣間見ることができます。
著書には59のエッセイが収められていますが、その一部をシリーズでご紹介。シリーズの最後には、坂井さんの特別インタビューも掲載予定です。どうぞお楽しみに。
→前回の記事は【坂井より子さん・飾らない。vol.1】主婦歴50年、家族も自分も笑顔で過ごすための生き方とは。
自分は自分、人は人。ようやく自然とそう思えるようになりました。
昔の自分と比べるとそこは大きな変化。年の功っていうのかしら。だから同居もうまくいっているのかもしれませんね。
娘家族が暮らす2階、息子家族が暮らす3階、そして私と主人が暮らす1階で、それぞれに別の考え方と暮らし方があると割り切れるようになったんです。
以前は人に対して「こうしてほしい」という要望がありました。
家の中を私と同じように使ってほしいし、出したものは片付けてほしい。子どもたちにも早く勉強しなさいって小言を言って。
でも人に求めてばかりいても、思いどおりになんてならないんですよね。なるわけがないのに、その結果にまた悶々として。
今考えてみると、そのストレスはけっこう大きかったなと思います。だから相手を尊重できるようになったのは、自分のためにもよかった。
大人になった娘と息子との付き合い方で心がけているのは、あまり入り込まないことです。
主人と約束をしているわけではないですが、夫婦ともにそう。それぞれの家に主婦がいるんですから、そこはわきまえるようにしています。
お金を使いすぎじゃないかしらと思うことがあっても、使えるだけ幸せなんだわと思うようにしたり。苦手な食べ物もひと口は食べなさいという方針で子育てをしてきたけれど、それも孫たちに関しては見て見ぬふり。
だって、それぞれの家庭のやり方がありますから。逆に子どもたちから口を出されることもないんです。お互いに嫌な思いをしないようにしているからこそ一緒にいられるんでしょうね。
ちょっと言いたいなってことも、まぁたまにはありますけど、でも言わないかな。
私の両親も主人の両親もそうだったんです。
子どもが小さい頃、土曜日は私の実家で、日曜日は主人の実家で夕食をとる習慣があったのですが、家庭生活や子育てに関してなんだかんだ言われた記憶はほとんどなくて。
自分が経験させてもらったからこそ、順番が回ってきた今、できるようになったのかもしれません。
※本記事は『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』からの抜粋です。
~第1章「笑顔の秘訣」より「人に求めなくなりました」
坂井より子/さかいよりこ
1946年生まれ。2人の子どもの母、3人の孫の祖母で、神奈川県葉山町に三世帯9人で暮らす。子育てが落ち着いた40代後半から15年ほど、自宅で料理教室を主宰。主婦歴50年の経験から生まれた暮らしの知恵や、人生を軽やかに生きるコツなどが、若い世代を含む幅広い年齢層に支持されている。
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飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方
主婦歴50年の坂井より子さんの3冊目の著書でこれまでの人生を深く綴った初めての本となる。夫との出会いや子育てののこと、三世帯暮らしとなってからの心境の変化や、家族9人分の食事づくりのことなどが紹介されている。
『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』(家の光協会)
写真/枦木 功 取材・文/片田理恵 再構成/結城 歩