ジェーン・スーさん×伊藤亜和さん対談1/大人として評価される「自立心」は 孤立と背中合わせ

ジェーンスーと伊藤亜和

大人女性の最強の寄り添い人であるジェーン・スーさんと、やわらかな感性で日常を自在に紡ぐ伊藤亜和さん。年の差を越え、心地よい距離感で「友達」認定し合う2人が思う「素敵な大人」についての鮮やかなトークをお楽しみください。

伊藤亜和さんが投稿サイト「note」に綴ったエッセイ『パパと私』。X(旧ツイッター)で大きな注目を集めたその文章に、ジェーン・スーさんが惚れ込んでフックアップしたことをきっかけに、2人の軽やか な関係が続いています。

プロローグ

伊藤亜和さんが投稿サイト「note」に綴ったエッセイ『パパと私』。X(旧ツイッター)で大きな注目を集めたその文章に、ジェーン・スーさんが惚れ込んでフックアップしたことをきっかけに、2人の軽やか な関係が続いています。

大人として評価される「自立心」は 孤立と背中合わせ、だから難しい。

——お2人が「大人だな」と思う人たちに共通するもの、特徴はありますか?

ジェーンスー
ジェーン・スーさん(以下、スー)

場面によって違うので、こういう人が大人だと一概には言えませんが——。ひとつ言えるのは、「他人に対する期待や依存度の低さ」のような自立心は、世間から大人として評価される要素だと思います。

伊藤亜和
伊藤亜和さん(以下、伊藤) 

他人に頼らず自己解決していく人ですね。

ジェーンスー
スー

でも、自立心が強すぎて「助けを求められない」となると、最終的には命取りになりかねない。自立は孤立と背中合わせだから、それを良いことと言えるのかは難しいところですね。

伊藤亜和
伊藤

意地になると大人ではないしそのバランスは確かに難しいですね。あと、「大人の味」といえば、苦みやビターチョコのような複雑な味を連想するので、そういう味がわかるようになるのが大人かなと思うし、逆に、苦みに鈍感になっているともいえる。苦さもおいしいと感じるように、いろいろ鈍くなるのも大人かなと思います。

ジェーンスー
スー

構成要素に矛盾があるものをそのまま受容できるのは、大人が持つ感覚かも。

伊藤亜和
伊藤

それから、ちょっとくだらないかもしれませんが、靴をいっぱい持っている人。

ジェーンスー
スー

なるほど。選択肢がある人ね。

伊藤亜和
伊藤

私はワンシーズンに一足の靴を毎日使って履きつぶすし、気に入ったものは毎日食べてしまう。だから、「今日はこれ」と幅広いなかから選べる人は大人だなと。ひとつに執着しないという、心の余裕に憧れているのかも。だからひとり暮らしを始めて、最初に楽しいと感じたのが、補充。

ジェーンスー
スー

ストック補充的なこと?

伊藤亜和
伊藤

そう、補充に快感を覚える。まだシャンプーあるけど詰め替え買っとこ、みたいな。どこか余裕がある自分に、豊かさを感じるんですよね。

——世代の違う友達は多いですか?

伊藤亜和
伊藤

年上の友達は、あまりいないです。っていうか、スーさんを友達と呼んでいいのかな?

ジェーンスー
スー

友達と呼んでくれたら嬉しいです。

伊藤亜和
伊藤

私くらいの年齢(20代)の人が、仕事以外で年上の人と出会うことなんて、なかなかないですもんね。

ジェーンスー
スー

そうだよね、私も同じ。20代の友達なんて、すごく貴重な存在。

——お互い刺激し合うような関係?

ジェーンスー
スー

単に気が合うんですね。年齢なんて関係ない、とわかる存在。そういう人は、何人かにひとりかな。私の方が年上だから、年下なら臆せず来てくれる人じゃないと、そもそも成立しないし。

伊藤亜和
伊藤

特に私は「舐めた」タイプだから。

ジェーンスー
スー

だからこそ、それが「臆せず来てくれる人」ですよね。まあ、そこに年齢の壁はないということです。それをおばさん側から言うと、妙にうざく聞こえてしまいますが。「私たち年齢とか関係ないよね!」って、それ言ったらもう、やばい(笑)。

——年下の伊藤さんから見て、スーさんを大人だなと思うシーンはありますか?

ジェーンスー
スー

特にないんじゃないかな(笑)。

伊藤亜和
伊藤

いやいやいや。でも、「大人なのに… …」って思うことはあります。

ジェーンスー
スー

「こいつ大人なのに」って?

伊藤亜和
伊藤

みんなが落ち着いている場面でも、足を組んだり、動いたりしていて。

ジェーンスー
スー

物を壊したり倒したり。確かに、落ち着きがないよね。

伊藤亜和
伊藤

でもその姿を見ると、「大人だからって落ち着いたりしなくてもいいんだ」と思うんですよ。

ジェーンスー
スー

あははは! あれでいいんだと。

伊藤亜和
伊藤

そうそう。ちゃんとやることやれば、少しくらい自由にしていいんだなと。

ジェーンスー
スー

「この程度のことならやっても大丈夫だよ」って、大人のボーダーラインを広げていくのが私の仕事ですから。ある意味、新しい大人ですかね。

PLOFILE

ジェーン・スー/じぇーん・すー

コラムニスト、ラジオパーソナリティ。52歳。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト『OVER THE SUN』のMCとして活躍中。新著「ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど」(光文社)。

伊藤亜和/いとう・あわ

文筆家、モデル。日本とセネガルのダブル。29歳。「note」の投稿が注目され、エッセイ集『存在の耐えられない愛おしさ』(KADOKAWA)でデビュー。新著『変な奴やめたい』(ポプラ社)。

写真/馬場わかな、ヘア&メイク/yumi(Three PEACE)、取材・文 /松永加奈、編集/鈴木麻子

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