【小泉今日子さんからのメッセージ・前編】舞台『ピエタ』を通して伝えたいこと
5年前に事務所を独立。制作会社「明後日」の代表として、舞台の制作やプロデュース業を手がけながら歌手、俳優としても活躍し続ける小泉今日子さんがクウネル・サロンに初登場!
長年温めてきた企画、舞台『ピエタ』が7月に上演されるにあたり、制作にまつわるバックストーリーや、作品を通して伝えたい思いを語ってくれました。
念願の舞台「ピエタ」がこの夏上演
小泉今日子さんが大島真寿美さんの小説『ピエタ』に感銘を受け、舞台化に向けて動き出したのは約10年ほど前だったと言います。制作会社「明後日」設立後も様々な事情で実現できず、2020年には公演直前まで漕ぎつけたもののコロナ禍の影響で中止に。それでも、来たるべき時に必ず上演できると信じて疑わなかったのだそう。
「『ピエタ』に関しては毎回なぜか前に進まない何かが起きて、呪われてるのかも?(笑)って思うくらい色々なことがあったのですが、不思議とネガティブな気持ちにはならず、きっと最高なタイミングでやるべき作品なのだと確信していて、それが今年になりました」
『ピエタ』は18世紀のヴェネチアを舞台に、孤児、貴族、高級娼婦という身分や立場の違う女性たちが、音楽に導かれるように交流と絆を深めていく物語。作曲家ヴィヴァルディがピエタ慈善院で音楽を指導していたという史実を基に、女性たちの人生が豊かに紡ぎ出されます。
「最初にこの小説を読んだ時、こういう物語を立体的な作品にしたいと思いました。イタリアを舞台にしたストーリーなので、映像化は難しいかもしれないけど、舞台だったらできるんだ!と思い、10年近く企画を温めてきたんです」
今を生きる女性も共感できる、18世紀のシスターフッド
プロデューサーとして作品の舵取り役を引き受けつつ、俳優としても出演。舞台の前には急遽映画の撮影も決まり、ほぼ休みのない状態で公演に入るという小泉さん。「この先数ヶ月が正念場ですが、前もって準備や段取りをしておけば、意外とできちゃうものなんです」と元気に笑います。
上演が延びたことで、当初演じる予定だった役が変更となり、物語の中心となるエミーリア役を演じることになったのだそう。
「『ピエタ』は18世紀のシスターフッド的な物語なので、自分も出ないことには!と思っていました。エミーリアは話の中心人物ですが、多くを語らず、水路に導かれるように物語を進めていくような役割。貴族の娘や高級娼婦の役の方が演じる面白みはあるかもしれませんが、この舞台を作る過程と同じように、私が物語の案内役を務めるのがしっくりくるんじゃないかなって」
過去の記憶が、今の自分を応援してくれる
孤児としてピエタ慈善院で音楽を学んだ少女時代を経て、40代になったエミーリア。ある日恩師ヴィヴァルディの訃報が届いたことから物語は動き出し、過去と現在、女性たちの人生が交差していきます。
「今の自分を支えてくれたり、時に応援してくれるのって過去の記憶だったりするんですよね。『10代、20代の私って元気だったな』とか『それなりに綺麗だったな』とか、少女の時に好きだったものや道端に咲いているお花を見て蘇ってくるあの頃の記憶が、今の自分を助けてくれたりする。
『ピエタ』という作品は、少女の頃に好きだったものや大切にしていたこと、記憶のカケラを探す旅の物語。見てくださる方が、それぞれの記憶のカケラに巡り会えたらいいなと思います」
インタビューは後編へと続きます。
asatte produce『ピエタ』
原作/大島真寿美 脚本・演出/ペヤンヌマキ 出演/小泉今日子、石田ひかり、峯村リエほか
【東京公演】本多劇場
【公演日程】7月27日〜8月6日
【チケット料金】一般8,500円 U-22 4,000円
※チケット発売は6月3日10:00〜、全席指定
【取り扱いプレイガイド】
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/asatte-pieta/
ローソンチケット https://l-tike.com/asatte_pieta/
イープラス https://eplus.jp/asatte_pieta/
東京公演を皮切りに、愛知、富山、岐阜公演もあり。日程などの詳しい情報は下記ホームページへ
明後日 https://asatte.tokyo/pieta2023/
小泉今日子
1966年神奈川県生まれ。オーディション番組をきっかけに1982年にデビュー。歌手として数々のヒット曲をリリース。また俳優としても多くの映画やドラマに出演。2015年に制作会社「明後日」を設立。舞台制作やプロデュース業にも力を入れる。
撮影/柴田フミコ、取材・文/吾妻枝里子