年齢を重ねるごとに難しさを感じる新しい友だちつくり。でも気の合う人と出会えたら、楽しく、新鮮な日常が待ち受けているかも。そんな新しい友人つくりのヒントを“人との出会いは宝”をモットーにする、古民家リノベーションでもおなじみの片岡延江さんが、DIYでつながる体験をとおして語ってくれました。
長年の友だちは気兼ねなくて心地いい。けれど、この年齢になって新しい友達もいたらいいな、と思っている。人生100年時代、先は長いから。今まで歩んできた人生をベースに、「それわかる!」と些細なことにも共感でき、それでいて新風を吹き込んでくれる、新たな知り合いができたら人生の幅も広がりそうだ。
かと言って、中高年向けのマッチングアプリには抵抗がある。仲間募集のサイトを見てみると「聖子ちゃんと昭和歌謡」「ディスコで盛り上がろう」など、興味をそそられるものもあるけれど、参加する勇気が足りない。
マッチングは自分から!趣味と嗜好でつながる、友だちを見つける
そんなこんなを考えながら、いつものように趣味のDIY情報を検索していたら、すごく心惹かれる投稿に出会った。
「出来ることは自分でやってみたい。作るのが楽しいから。自分で床張りや内装、漆喰塗もやります!」という宣言。 長野で、すでに『ヤドリンゴ』という民泊兼イベントスペースを運営されていて、今度は職人さんの手を借りながら、連棟式の隣家のDIYリノベーションを始めるという。
子どもたちに絵本を貸し出すミニ図書室も併設するという、それも平屋の古民家で。なんて素敵なんだろう。そのリノベの様子をストーカーのようにチェックしていたら、床は無垢のカラマツの羽目板、洗面所にタイル、壁に古材を使っていたりと、嗜好が私と似ていて、慣れない工具と奮闘してる姿にも共感してしまった。「私の思う新しい友だちってこういう人なのでは」と雷に打たれた気持ちになって、意を決してメッセージを送ってみた。
「リノベの奮闘、いつも拝見しています。いつか長野に行ってお話伺いたいです、漆喰塗り頑張ってください」。すると、すかさず「ぜひいらしてください」と返事が来た。
そして、最近、それがついに実現した。「味噌作りのイベントをするので、よかったら来ませんか」と、お誘いいただいのである。晩夏のある日、友人を誘って朝一番で車で長野まで。リノベ物件はすでに完成し『ヤドブンコ』と名付けられ、読み聞かせ会が開かれたり、民泊としてオープンもしていた、が、コロナ禍もあってなかなか大変なようだった。
心のこもった、冷汁と玄米ごはん付き信州での味噌づくり
オーナーの小林征子さんは、もともとは関西でまちおこしの仕事に関わっていたが、4年前に実家にある長野に戻られたとのこと。味噌づくりの講習会は、小林さんの友人がやってみたいと提案し実現した。発酵に詳しい、また別の友人が講師となり、味噌以外の発酵食品についての学びもあった。
家でほぼ毎日お世話になっているお味噌が、大豆と米麹と塩だけで出来ていることにいまさらながら驚いた。テーブルの上でみんなが一心不乱にまぜでこねて、楽しかった。この日は『ヤドブンコ』に宿泊。夜は、長野産のシードルを飲みながら家のこと、地域のこと、温泉のことなどなど、一生話していられると思うほどしゃべりまくった。
『ヤドブンコ』の目の前には、桃や、梨、リンゴの木があって収穫を楽しむことができる。種にこだわった野菜は、ナスやトマトやかぼちゃ、キュウリなどなどが植えられている。「なるべく自然に、と無農薬や減農薬で」と。だからかなのか、茎やツル太く、もさもさしていて、しっかり大地に根付いるようだった。
遠くの友だちに会いに行くオフ会は思いがけず旅行に。
善光寺参りに行ったり、小布施でマロンシャンテリーを食べたり、ワイナリーにも行った。道の駅で食べたおそばも美味しくて、思いがけず、充実した旅行になった。お味噌は半年後が楽しみだ。
50、60代にとってスマホからの友だちづくりは「日常的」ではないけれど、お互いの趣味嗜好をきっかけにしたやり取りの中で、人となりが知れて、会ってすぐにでも核心的な話までできたりする。リアルな出会いとはまた違ったよい関係が築けるのではとも思えた。「いまさら」と若い世代に笑われそうだけど。
その後、小林さんとは、幾度となくzoomでやりとりし、床の品番や、雨音が響く小屋根の対策のことなど、いつも話題が尽きず、楽しい時を過ごしている。今度は東京の作業場にも遊びにきてくれるそうだ。私もリンゴが色づく季節になったらでかけてみたいとも思っている。長野に新しい友だちが出来てよかったな。
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