葉山の山の上にある一軒家での生活を続けて40年になる伊藤千桃さん。山奥でゆったりスローライフ、ではなく、朝からフォカッチャを仕込んだり、庭のレモンでレモンパイを作ったりと快活に動き回っている様子。そんな伊藤千桃さんの暮らしぶりは、心地よく生活するためのヒントがたくさん隠れています。
伊藤千桃/いとうちもも
1950年ジャカルタ生まれ。インドネシアと日本のダブル。葉山の山の上の自宅には母家と離れがあり、『桃花源』の屋号でお弁当のデリバリーや民泊などを営む。旬の地野菜を使った料理が評判。
毎朝5時に起床。庭に来る鳥たちに餌をあげるところから伊藤千桃さんの一日ははじまります。身支度をして自家製のパンとコーヒーの朝食をすませると、そこからは大忙し。
「ここは山奥で自然相手でしょう、やるべきことがいっぱい。山菜や野草摘みに薪拾い、野菜や果実の収穫も。最近は食べ頃の果実をリスと競うように採り合ったりしています」
一日のうちでキッチンで過ごす時間は長く、お気に入りの場所でもあるそう。
「キッチン道具やカトラリーの収納を『こうしたらもっと便利』『飾るとかわいい』など模様替えするのもしょっちゅう。庭の木をすりこぎにして、壊れたくわの先端は道具掛けにアレンジを。工夫して使うのが面白いですね」
「これと思って出合ったものは長く大切に使いたい」
自然の恵みを生かして暮らし、今あるものを何かに使えないかと知恵を絞る楽しさは、部屋作りにも表れているよう。リビングは骨董屋で購入したスペインのアンティークのテーブルを主役に、アジアの織物を組み合わせるなど実にユニークです。
ほかにも古くなった和ダンスを靴箱に再利用するなどアイデアがあちこちに。こうして生まれた空間は、○○風インテリアとひと言ではいえない独特のおしゃれさと居心地のよさが漂ってます。
写真/加藤新作 取材・文/薄葉亜希子 編集/河田実紀 再編集/久保田千晴