【”あきらめ”がキーワード? 一田憲子さんの大人の片づけvol.5】これから必要なお金を把握して、現状を知る勇気を

一田憲子

編集者・一田憲子さんの新刊『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)が話題です。発売早々に重版がかかったそのわけは、片づけ本にはあまりない大らかさゆえ?!

自身を「面倒くさがり」で「三日坊主」と評する著者の気ままな片付け術は、どんな人でも「あなたでもできます」と受け入れてくれる柔軟さがあります。そして、一見「片づけ本」のようでありながら、人生の後半を心地よく生きるための指南書でもあるところが本書のみそ。読んだ後から、やる気が沸きおこり、自分の暮らしに風を通すヒントが見つかるはずです。連載第五回目は、「何となく不安」を抱えている方が多い老後のお金について。

■お金の不安は、現状を「見る」ことから

ずっと「ちゃんとしなくちゃ」と思いながら、見ないふりをしてきたのが、「お金」についてでした。私はフリーランスで毎月決まった収入があるわけではなく、「一定額を貯金するなんて無理!」と思ってきたのです。さらに、若い頃は、 何かを買って手に入れ、使ってみることで、自分の経験値を増やそうと思っていました。つまり、「お金を使う」ことは、自分の引き出しを増やすことであり、 仕事のスキルを上げること。こうして私は、貯金することもなく、ただ気の向くままに買いたいものを買って過ごしてきました。なのに、いつも将来のお金のことが不安。「仕事がなくなったらどうしよう」「老後はどうやって生きていこう」というもやもやを抱えていました。 『キッチンで読むビジネスのはなし』(KADOKAWA)という本を出し、 いろいろな方に「ビジネス」についてのお話を伺う中で、かつて「エヌ・ワンハンドレッド」というカシミアのブランドを主宰されていた大井幸衣さんがおっしゃったのは、「貯金は、自分を自由にしてくれる」ということでした。

一田憲子
お金について、きちんと学んでみたいと思い始めたばかり。

「若い人みんなに言うのよ、ちゃんと貯金しておきなさいって」。私はすでに50歳を超えていたけれど、この話を聞いてやっと、貯金について考え始めました。 「ちょっと無理かも?」と思う金額を、普通預金から引き落として定期預金に。 すると、確実に貯金が増えることを知って改めてびっくり! なんて遅い気づきでしょう! そして痛烈に思ったのです。もっと早く始めればよかったって。 それにしても、「これじゃあ老後にはまだまだ足りないんだろうなあ」と後悔する日々。いったいいくら足らなくて、そのために今からでもできることって あるんだろうか? でも、それを誰に教えてもらったらいいんだろう……。悶々としている中で、たまたま知り合いが、ファイナンシャルプランナーをしている、という友人を紹介してくれました。藁にもすがる気持ちでその方のワークショップに参加してみました。

そこで教えてもらったのが、老後に必要なお金の計算方法でした。女性の平均寿命はなんと87歳。今の自分の年齢を引き算して、あと何年あるかを出し、 1年に使うお金(平均1か月約35万円)を掛けます。この必要金額の総合計から年金や個人年金の金額を引き算します。こうして算出したリアルな老後のお金を確保するためには、今からいくら貯金しなくてはいけないかを、実際に「数字」として把握する……。電卓をはじきながら「ひゃ〜、見たくない!」と思ったのですが、具体的な数字を目の前にすると、す〜っと冷静になれた自分に驚 きました。人は、「見えない」から、「なんとなく不安」を抱え続けるのだ、ということがわかってきました。現実をきちんと「見る」ことで、それがもし今からでは挽回不可能な金額であっても、少しでもよりよくするための対策を考えることができます。

きちんと計画的に貯蓄している人には、こんなジタバタは必要ないのかもし れません。でも、もし私のようにずっと「後まわし」にしてきた人がいるなら ……。お金の片づけの目的は、「なんとなく不安」から抜け出すこと。そのために必要なものは、現状をしっかり見る勇気のような気がします。

撮影 黒川ひろみ

※本記事は『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)からの抜粋です。

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